細胞株の汚染、3万件超の生物医学関連研究結果に影響か

2017年10月24日 16:27

印刷

記事提供元:スラド

 生物医療系の分野の研究において、「細胞株の汚染」によって誤った結果が導き出されるといった問題が多く存在する可能性が示唆されている。最新の調査結果によると、3万以上の科学論文がこの問題の影響を受ける可能性があるという。

 生物医療系分野では、研究用に培養した「細胞株」を利用することがある。通常の細胞には寿命があり、一定回数の細胞分裂を経た後に死滅してしまうが、その一部が死滅せず、無限に増殖できるようになることがあるという。こういった細胞を「細胞株」と呼び、研究用として使われるのだが、何らかのミスやトラブルでこの細胞株にほかの細胞が混入するといった「汚染」が発生してしまうことがあるという。

 こういった細胞株は培養されて多数の研究機関に提供され、それがさらに培養されて使われる、といったことが繰り返される。たとえば「HeLa細胞」と呼ばれる細胞株は培養され続けた結果、使われた量はトータルで20トンほどになると推定されているという。しかし、こうした細胞は増殖性が高いことから容易にほかの細胞に混入してしまい、それが知らぬ間に研究結果に影響を与えてしまうことがあるという。

 例としては肺がんの研究で使った細胞が実は肝臓の細胞だったり、人間の細胞だと思って使っていたものが実はマウスの細胞だった、といったものが挙げられている。こういった事例は多数あり、その結果多くの論文が不確かなものになっているという。

 この問題を受けて、Radboud UniversityのSerge Horbachらが、こうした汚染や取り違えのうち既知となっているもののリストである International Cell Line Authentication Committee(ICLAC)の誤認細胞株リストを調べたところ、こういった「汚染が発生したことが判明した細胞株」を使って行われた研究が1950年代から存在しており、その影響は約3万3000もの論文に及ぶことが分かったという。

 こういった汚染による取違いは過去に日本でも発生して問題となっていた

 スラドのコメントを読む | サイエンスセクション | バイオテック | サイエンス

 関連ストーリー:
理研のバイオリソースセンターで本来のものとは異なる由来の細胞が提供されていたことが発覚 2014年03月31日
きっと目覚めさせるから……環境試料タイムカプセル棟で眠れ 2004年06月01日
40人分のヒト細胞株が借金の担保に  2001年10月25日

※この記事はスラドから提供を受けて配信しています。

関連記事