ジャパンディスプレイが手にした努力の結晶を、活かす方法は何処にある?

2017年10月20日 06:33

印刷

 4日の日本経済新聞はジャパンディスプレイ(JDI)グループのJOLED(ジェイオーレッド)が、有機ELを低コストで生産できる独自方式の開発にメドを付けたことを伝えている。JOLEDが開発を続けてきた「印刷方式」と呼ばれる生産方式の量産対応に世界で初めて目途をつけたのだ。

【こちらも】JDI、有機ELの資金調達報道にコメントも 印刷方式と蒸着方式は併用

 この方式はプリンターのように微細に発光材料を塗り分けるところに特徴があり、有機ELで先行している韓国サムスン電子などの「蒸着方式」より低コストで材料ロスも小さい。大雑把に言うと、製造コストを3~4割下げることができて、有機ELパネル市場での圧倒的な優位性を獲得できる見込みである。日本メーカーで初めて、有機ELの量産化に目途を付けたことになる。

 技術的な見通しが付いた上で早急に進めなければならないのは生産体制の確立である。生産工場はJDIの石川県能美工場で、専用の製造装置を導入して19年にも有機ELの量産を開始する。現在同工場ではJDIが液晶パネルを米アップルのiPhone向けに生産中であるが、年内の生産停止を表明しており、JOLEDが運営を引き継ぐことになる。

 JDIは能美工場に新規投資して量産技術や有機EL特有の発光部分などの制御技術を確立し、パートナー企業に技術供与して還元する考えで、有機EL生産で先行する韓国勢への対抗軸を形成する計画と見られる。しかし、有機ELの量産が19年になるということは、まだ1年以上も先の話ということだ。

 有機ELの市場規模が21年には約5兆円と大幅に拡大することが見込まれ、スマートフォン向けが中心である他、幅広い用途(テレビ・医療機器他)で採用が広がる見通しにある。逆に、テレビ向け中心の液晶パネルの市場規模は21年に5%程度の低成長に陥るものと見られている。

 折角低コストで歩留まりの良い新方式による量産技術に目途を付けたものの、その後の計画が明瞭に見えてこないところがもどかしい。3期間赤字決算を続け、今期も大幅な赤字が見込まれるJDIに量産資金を拠出する力はない。今こそ産業革新機構の存在感を見せつける時ではないのか?今までの助走期間に散々疲弊させておいて、いざという時に役に立てないのでは意味がない。国産有機ELへの道程をJDIと共に産業革新機構が示すようでなければ、存在理由を問われると考えるのは当然である。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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