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「変わらない部下」は、変えられないのか、変える気がないのか
あるマネージャーが、自分が指導している一人の部下の行動について悩んでいます。「一生懸命指導しているが、なかなか変わらない」のだそうです。その部下は、おとなしいですが真面目な性格で、何より素直なところが取り柄だということです。
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しかし、仕事ぶりは決して前向きとは言えず、自分から積極的に取り組もうとはしませんが、かといってまったく結果が足りない訳でも、能力がないという訳でもありません。
仕事が早い訳ではないが遅すぎて問題というほどでもなく、多くの仕事をこなせる訳ではないが少なすぎてどうしようもないこともなく、何も任せられないというほど無責任でもありません。
こんな様子なので、評価は人並み以下にしかできませんが、全くダメという訳ではありません。また本人もその評価結果には特にこだわりはなく、別にそれでよいと思っている様子です。
マネージャーは、この部下が素直で真面目な人材だということで、何か成長の芽があるのではないかと思っており、これまでもいろいろな働きかけをしてきました。選抜して社外の研修に参加させたり、仕事に役立ちそうな資格を紹介してその取得のための勉強を勧めたり、自分の身近に置いてOJTでのこまめな指導をしたこともあります。
しかし、それらの取り組みから部下に目に見える変化は見られず、あまり効果的だったとは言えません。本人もその場ではやる気があるようなそぶりを見せることはありますが、結局行動は変わりません。
部下が上司からここまで面倒を見てもらえるのは、一見すれば幸せなようにも見えますが、私にはあまりそうとは思えませんでした。それはこの部下に対する期待が、本人の能力を超えた過剰なものではないかと思うからです。マネージャーは「なかなか変わらない」と言っていますが、「変わらない」のではなく「変えられない」ということです。
もちろんどこかに伸びしろはあるでしょうが、今の要求レベルは本人にとって難しく、実は本人もそれを悟っていて、どこかあきらめている可能性があります。やはり目標を与えるにあたっては、まずその人のレベルで手の届くものでなければなりませんが、このマネージャーはそのレベルを少し見誤っていると思います。
「なかなか変わらない」というという時に考えられる理由には、もう一つ「変える気がない」ということがあります。能力があっても本人にその気がないという場合で、本人さえその気になれば成長して「変わる」可能性はありますが、私の経験ではこちらもそう簡単ではありません。
人間が何か行動を変えなければと思う機会は、人生でそう何度もあることではなく、大きな人生の転機や人生観が変わるような出来事に出会ってのことであるか、もしくは長い時間を経過する中で徐々に変化していき、振り返ってみると実は変わっていたというような場合でしょう。
こちらも周りからできることは、何かしらの働き掛けを続けることしかなく、いつ結果につながるかはなかなか意図できるものではありません。
もちろん「変わろう」「変わりたい」と考えていて、自分から進んで取り組む人もいます。マネージャーにとっては指導しがいがある人材ですが、そういう人は周りから見ていても何かしら変わっていくので、「変わらない」という指摘を受けることはほとんどありません。
こうやって見ていくと、「変わらない」という人材を周りから変えようとしても、それは相当に難しく、結果を期待してはいけないということになります。
これは、求めているものが業務スキルにかかわるようなものであればまた事情は異なり、遅い早いの違いはあってもある程度のスキルは身につくものなので、その点では多くの人が「変わっていくこと」ができますが、今回のマネージャーが求めているものは仕事への取り組み方、向き合い方と言ったマインドに関わることです。
これを変えようとする働きかけは、それが必ず報われるというものではないので、このマネージャーのように、部下が「変わらない」というのを悩むこと自体が無意味なことです。
自分の力で変えられないことをいくら悩んでも仕方がありません。周りからできることは刺激を与え続けることしかなく、あまり結果を求めすぎてはいけません。
あらためて、「他人を変える」などということは、そう簡単にできるものではないと心得ておくことだと思います。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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