次から次へとやることが生じるあなたに必要な「仕事の範囲の明確化」【コンサルタントの技・プロアクティブ仕事術】

2017年10月4日 15:36

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記事提供元:biblion

 【連載第1回】「毎年同じことを繰り返せばいい」時代は終わり、能動的に先読みした仕事が求められるようになりました。世の中の変化が激しくなり、昔の通りに仕事をしていてはダメだと多くの人が気付いています。本連載では、仕事をデザインし、思い通りにプロジェクトを遂行していくための仕事のスキル「プロアクティブ仕事術」をご紹介します。

次から次へとやることが生じるあなたに必要な「仕事の範囲の明確化(スコーピング)」【コンサルタントの技・プロアクティブ仕事術】

 本連載は、書籍『プロアクティブ仕事術 コンサルタントが3年目までに身につける仕事をデザインする方法』(2017年7月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。

「あれはどうなっている?」「これはどうなっている?」と聞かれていませんか?

 最初は、次から次へとやることが生じて、てんてこ舞いをしているケースへの対処法をご紹介します。

 次から次へとやることが生じる際、会社で起きがちな問題は、上司や周りから「あれはどうなっている?」、「これはどうなっている?」と聞かれることです。

 その時のあなたの答えは、このようになっていないでしょうか?
 「ええ!? それは考えていませんでした」

 あるいは、そうは言えずに、黙り込むことも多いのではないでしょうか。
 基本的に、うっかりしてヌケ・モレがあった程度という「うっかりミス」で済むこともあるでしょうが、一方で、そのヌケ・モレが大問題になることもあります。

大問題に発展する「ヌケ・モレ」をなくすには?

 たとえば、あなたが会社の受注システムの設計をしているとします。あなたは、データで来る受注形態、手入力で受注登録する受注形態、FAXで来る受注をOCR(読み取りシステム)で受注登録する受注形態、WEBを経由した受注登録を設計していました。

 これで安心と思ったら、上司から、代理店が直接わが社のシステム端末を使うことで発注して受注する受注形態の設計を問われて、やっていないことで慌てるというケースがあったとします。代理店に大迷惑、やりなおし、というのは、大問題の例です。

 自分一人で作業が完結すればいいのですが、システムを作る場合は、外注に開発を依頼することも多々あるでしょう。もし、この例にあるように、あることがヌケ・モレしていると、予算に影響したり、期限に影響したりして、大問題に発展することもあるのです。

 この場合、問題なのは「網羅性」です。「網羅性」を担保するには、仕事の範囲を最初に確認しておくことが必要なのです。その作業が「スコーピング」なのです。
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仕事がどんどん広がって、負荷オーバーで機能不全に陥っていませんか?

 「あれはどうなっている?」、「これはどうなっている?」という質問は、ヌケ・モレの問題を明らかにする質問ですが、使い方を誤ると、仕事の範囲がどんどん広がる危険性もはらんでいます。

 あなたにも経験はないでしょうか。ある仕事をしていたら、あれもやらなければ、これもやらなければ、となって、山のような仕事を抱えてにっちもさっちもいかなくなったり、仕事のスピードが極端に落ちて、仕事の山をかたづけるのに疲れきってしまったりしたことが。

 いわゆる仕事を拾ってしまう、という状態です。際限なく仕事が広がるというのは、やはりスコープの問題を抱えています。自分の仕事の範囲、領域を明確にしないから、次々と仕事が出てくるのです。場合によっては、「これは自分の仕事ではない」といえるように事前に準備しておくのです。そうするのも、やはり「スコーピング」が大切です。

あなたに欠けているのは「仕事の範囲の明確化」

 仕事にヌケ・モレがあったり、次から次へと仕事が広がったりしていくのも、最初に自分の仕事の範囲を明確にしていないからです。仕事の範囲を明確にすることを「スコーピング」と言います。

 「スコーピング」は、スコープの動名詞です。スコープは、ご存知の通り「視野」という意味です。仕事にスコープと言う言葉が使われるときは、仕事で対象となる視野、つまり範囲という意味になります。ですから、スコープを確認し、自分の仕事の範囲を確認して明確にしておくことをスコーピングと言うわけです。
 「スコーピング」によって、自分の仕事の範囲が明確になるので、事前に全体像が把握でき、ヌケ・モレを避けることができるわけです。
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責任の範囲を線引きする

 また、「スコーピング」は自分の仕事の範囲とそうでない範囲を事前に切り分けているので、「それは私の仕事ではなく、○○さん(あるいは○○課)の仕事です」と押し返せます。まあ、これは下手をすると、自分の仕事の範囲を狭くし、官僚的な対応になる恐れがないこともないのですが、かといって、責任のない仕事を次から次へと引き受けていたら体がもちません。
 自分が責任を持って行う仕事はここまで、という線引きは、きちんと持たなければ、かえって無責任な仕事になるのです。

 さらに言うと、自分が仕事を組み立てるときにも「スコーピング」は重要です。自分が関わる仕事と、自分が関わらないが関連する仕事との関係をきちんと把握し、必要に応じて事前に手を打っておくことが必要だからです。

 たとえば、あなたが営業の仕事をしていて、見積もり作成をしているときに設計者の支援が必要だとします。
 設計者はいつも複数の仕事を抱えていて、あなたに時間を割り振ってくれないとします。見積もりの根拠は設計者の設計図です。設計は設計者の仕事だから、要件確認、仕様出し、設計図面描きの一連の仕事は設計者の仕事といって割り切って、「早くやれ」の一点張りも可能です。しかし、これでは時間もかかるし、ぎすぎすします。

 そこで、設計の仕事を一部自分の仕事のスコープに取り込むことによって、見積もりを迅速に行わせることも可能になります。要件確認の基本くらいは、営業が仕事のスコープに取り込むことだってできるのですから、スコープを広げて、少しでも設計のボトルネックを解消して、自分の仕事のスピードを上げることもできるわけです。

スコーピングを活用し、仕事をコントロールする

 仕事の「スコーピング」は、仕事の責任範囲と自分で関わる仕事の領域を確認し、スコープを盾にとって防波堤にしたり、スコープ内外の仕事をうまく調整して思い通りの結果を得たり、上手に仕事の対象範囲をコントロールする道具なのです。

 「スコーピング」は仕事を開始する前に行います。仕事が始まったら、設定したスコープを調整する程度で済むようにすべきです。プロアクティブに「スコーピング」しておくことが重要なのです。

 (次回に続く)

この記事の話し手:石川 和幸さん

この記事の話し手:石川 和幸さん早稲田大学政治経済学部政治学科卒、筑波大学大学院経営学修士。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)、日本総合研究所などを経て、サステナビリティ・コンサルティングを設立、代表を務める。IE士補、TOCコンサルタント(Jonah資格)。専門は、ビジネスモデル構想、SCM構築導入、ERPシステム導入、管理指標導入、プロジェクトマネジメントなど。URL: http://www.susco.jp/ 元のページを表示 ≫

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