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「正しさ」より「わかりやすさ」でリーダーを選ぶらしいことの危うさ
脳科学者として著名な中野信子氏のインタビュー記事を読んでいた中で、「本当に正しい人」より「わかりやすい人」が選ばれるという話に目が留まりました。
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ある実験で4人の学生に数学の問題を解かせ、答えの選択肢の中で、最初にAさんが「これが正しい」と答えると、他の2名がそれに追随し、そのあと少ししてDさんが「こういう計算結果だから正しいのはこの答えだ」と言う形でのトライアルを繰り返していくそうですが、それを続けると、4人の中ではDさんの答えが正しく、一番数学が得意だということがわかっていきます。
そして最後に「どの人をリーダーに選ぶか」と尋ねると、正しい答えを出すDさんではなく、真っ先に自信をもって答えるAさんが選ばれるのだそうです。
これは毎回そういう結果になるそうで、中野さんは「集団の意思決定では、回りくどい正しさよりも、簡潔にみんなを納得させられるリーダーシップが重要視されるということだ」とおっしゃっていました。
こういう話を聞いてから、以前のことをいろいろ考えてみると、私も同じ経験をしたと思われることが、意外に多かったのではないかということに気づきます。語っている内容はともかく、自分の考えを一番先に述べる人が、結果的に組織のリーダーになっているということです。
これは特に経営者には多い感じがしますが、組織のリーダーだから先に自分の考えを言うということばかりではなく、先に自分の考えを言う人だから、その結果としてリーダーに選ばれた、もしくはリーダーとして認められていったということがあるのかもしれません。
ここから考えていくと、リーダーに選ばれる、もしくは認められるためには、人の意見を聞くよりは、もしくは正しいことを言うよりは、真っ先に自分の意見を言うことが重要だということになります。
今まで多くの組織を見てきて、こうやって「先に自分の意見を言うわかりやすい人」がリーダーになっているケースは、確かに多いと感じます。
ただ、この「真っ先に言う自分の意見」が“正しいリーダーシップに基づくもの”であれば問題はありませんが、私が見ている限りでは、後になってから問題を起こすリーダー、見込み違いだったと失望を買うリーダーには、どちらかといえばこのタイプの人が多いと感じます。
これはある会社で見たことですが、「自分の意見を持っていて行動力があり、リーダーシップがある」と評価されている人材をマネージャーに抜擢したところ、「自分の意見」として発信される内容が、自分の都合で周りに無理を強いるものであったり、私欲と見られても仕方がない行動があったりするなどの問題が見られるようになり、そこから部下の信頼を失い、結果としてマネージャーから外さざるを得なくなったということがありました。
マネージャーの「自分の意見」が偏っていることに気づいて、早めに処置することができたということでは良かったのでしょうが、そこに気づくことができずに、リーダーにふさわしくない人材がリーダーを務め続けているというケースは、たぶんたくさんあることでしょう。
「組織が向かう方向を示せない」「物事が決められない」など、リーダーとしての能力そのものが欠けているのは困りますが、「誤った方向に引っ張る」というリーダーも困りものですし、一見するとリーダーシップがあるように見えてしまうということでは、こちらの方が問題かもしれません。
人間の心理として、「わかりやすい人」がリーダーになりやすいことはある程度仕方がないとしても、リーダーが誤った方向に向かってしまうと、その後からの揺り戻しが大きくなります。
やはり、リーダーの発言の「正しさ」も、きちんと見極めていかなければならないということを痛感します。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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