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「360度評価」は組織風土によって正反対の反応がある
食品大手の「味の素」の社長に、人材戦略を聞いたインタビューの記事があり、その中でグローバル人材、経営人材の育成に関する話と合わせて、経営トップに対する「360度評価」の話がされていました。
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ご自身がブラジル法人のトップだったとき、現地法人の社員と、本社の経営メンバーから、自身の360度評価をしてもらったそうで、本社の社長に就任した後の昨年も、社員の中から無作為に選んだメンバーに360度評価をしてもらい、その結果を社内で公表したということでした。
他の役員も360度評価を実行していますが、これは実際の評価制度とは連動させておらず、その理由は本音の声を聞いてマネジメントに活かしたいからということで、もし評価と連動させれば、必ずプラス評価ばかり書き込まれて、本音が聞けなくなるからとのことでした。
「360度評価」というのは、それに慣れていない上司にとっては少し怖い感じがしますが、それを経営トップまで対象としている例はあまり聞いたことがなく、それほど自分に対する意見を率直に聞こうという姿勢は素晴らしいと思います。
ただ、私が注目したのは、「評価と連動させると、必ずプラス評価ばかり書き込まれる」というところです。この会社の場合はそういう反応になるのだなという感想です。
この「360度評価」は、その目的や活用方法、実施のしかたなどによって、また組織風土によって、反応の出方が大きく違う仕組みです。組織風土によって反応が違うのは、どんな制度や仕組みでも同じですが、私が経験した中で、「360度評価」の場合はその振れ幅がとても大きく、会社が違うとまったく正反対の反応になるようなこともあります。
この記事にあった「評価と連動させるとプラス評価ばかり」というのも、私はこれとはまったく正反対に、「上司に対してダメ出しのマイナス評価ばかり」という会社を見たことがあります。
上下関係が割ときつく、上司が一方的に指示命令をする傾向が強い会社でしたが、その上司をしっかり評価する材料にするということで、部下から匿名のフィードバックをさせて評価に反映するというものでした。そこで、日ごろ押さえつけられていて不満を持っていた一部の部下が、これも一部の上司に対して著しいマイナス評価をつけてきたということがありました。
ほぼ仕返しのような話ですが、特に360度評価の場合、上司と部下の関係性や組織のオープン度合いなどによって、こういうことが起きるということです。また、360度評価のデメリットの一つに「評価能力のバラつきが大きくなりがちで、結果の妥当性が保証できない」というものがありますが、まさにそのデメリットが大きく出てしまったということです。匿名での評価ということも影響したでしょう。
「360度評価」は、1000人以上の上場企業では半数近くに導入されているという調査結果があり、大企業では導入が進んでいることがわかります。また、各社ともに目的と自社の風土をよく考えて、工夫しながら活用をしています。
その一方、中堅中小企業では、まだそこまでは達しておらず、導入したのにデメリットが目立つ例も、私が見る限りでは中堅中小企業に多いようです。
無理な導入や安易な他社事例の真似など、どこかで自社の風土に合わない形になってしまっていることが、中堅中小企業ではまだまだ多いということではないかと思います。
また、始めは合わないと思っても、継続しながら合わせていく根気も必要です。
特に人事の関する制度、施策は、自社の組織風土に合わせて取り入れることが大切です。そうでないと、せっかくの取り組みが逆効果になりかねません。流行りや思いつきでなく、自社に合ったものを慎重に考えていきましょう。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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