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タクシー、乗車前に運賃が分かる 実証実験の成果はいかに
実験に参加している国際自動車が日本ユニシスと共同開発したアプリの画面イメージ。(写真: 両社の発表資料より)[写真拡大]
世の中に色々な商品がある中で、購入したいときに価格が分からないものはあまりない。ほろ酔いで帰宅する時、電車やバスなら料金の心配をすることはない。タクシーに乗る時は何故か自然に身構えている自分を感じる。何故なら、下車する時に請求される乗車料金がいつも同じとは限らないからだ。わざとではないと思うが遠回りされたり、町名を聞き間違えられたり、気を抜いていると割り増し状態の料金が請求されてしまうからぼやぼやできない。料金を払う客を緊張させる商売が他にあるのかと思う。
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そんな思いを抱き続けて何十年になろうという今年8月、タクシー大手の日本交通など4グループ、44社が国土交通省と共同で「運賃を乗車前に決める仕組み」の導入に乗り出した。客がスマホに取り込んだ配車アプリに、乗る場所、降りる場所を入力する。アプリの地図に走行距離や所要時間が表示され、迎車料金も加えた合計金額が表示される。東京23区と武蔵野市、三鷹市を走る4,648台が対象となり、3,000円以上の料金であれば配車を依頼できる。配車ボタンを押すと実験に参加している4,648台の中から、客の現在地に近い車両が迎車する。
7日からスタートした実験は2週間を超えていくつかの問題点が浮き彫りになったことと思う。渋滞等があって大幅に遅れた場合などはアプリに表示された乗車料金との差が大きくなる。これをそのまま請求されるのではアプリを導入する意味がない。30%を上限にするとの縛りもあるが、要領のいいドライバーに当たったらどうなるのか。心配は尽きない。
実験に参加しているタクシー会社は18年度にも新制度の導入を期待しているが、配車アプリの開発をタクシー会社が独自に行う建前だと、零細事業者は大手に飲み込まれて系列に参加するか、配車システムとは無縁の一匹狼しか選択肢がなくなってしまう。タクシー大手が業界再編成まで計算しているかどうかは判然としないが、国交省が参加して必要な制度設計を進めるのであれば、アプリを開発する力のない事業者をどうするのかという、細かい配慮が求められる。
1月に実施した初乗り運賃の見直しは、大手4社の半年間の短距離乗車回数が前年同期比20%の増加を見せ、全体の営業収入も6.8%の増収と上々の滑り出しとなった。今後は「相乗りタクシー」の実現を目指した実証実験を始めたいとの腹積もりもある。消費者のニーズを的確に把握すると、色々な可能性が見えて来るというお手本になって欲しいものである。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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