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「ブラック労働」の経営者に聞かせたい、社員が“辞められない理由”
あるウェブサイトに「ブラック労働」に関する記事があり、そこで取りあげられていたのは「塾講師」に関する話でした。
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すべての塾に当てはまる訳ではないでしょうが、その記事によると、「丁寧に授業をしようとすれば、その準備は必須だが、授業準備は無給であり、その他の拘束時間の分まで時給換算するとかなりの低賃金であること」「本来の授業とは関係がない生徒の新規獲得などの営業も要求されていること」「有期雇用の講師が多く、賃金が高めになるベテランが雇い止めにあいやすいこと」などが書かれていました。
「学生などを低賃金で働かせて、高い授業料で利益をあげるビジネスモデル」とコメントされていました。
ブラック企業やブラック労働に従事する人に対して、「そんな会社、仕事なんか辞めてしまえばいい」という人がいます。しかし、そこには簡単には辞められない締め付けや恫喝があったり、そういうものだと思い込ませる洗脳に近いものがあったりすると聞きます。労働法をはじめとする法律的な知識や、相談しようという姿勢が足りないというような人もいます。
実際にそういった理由はあるとして、これは以前私が、ブラックではない普通の塾で講師のアルバイト経験がある学生さんの何人かに話を聞いた時に、異口同音に語られた「辞められない理由」はそれとは少し違うものでした。
それは「子供たちのことを思うと辞められない」ということです。
塾講師として勉強を教えるにあたって、塾に来る子供たちは必ずしも勉強したい子ばかりではありませんから、そういう子たちを少しでも勉強する気にさせるために、押したり引いたり、いろいろなコミュニケーションをとっていくのだそうです。
そうやって自分が担当する子供たちとの信頼関係を少しずつ作っていくそうですが、子供たちは誰にでも無条件で馴染むわけではありません。
講師の中でも自分だけに心を開いてくれたり、自分が講師の時だけ勉強に取り組み始めたりという子たちもいます。要は「この子を教えられるのは自分しかいない」という状態です。「自分が辞めると子供たちを困らせてしまう」というのです。
私が話を聞いた人たちは、「確かに仕事は大変だし、時給が高いわけでもないし、ただのアルバイトと思うと割に合わない気がするけれど、自分が辞めてしまうことで子供たちが元に戻ってしまうのではないかと考えると、簡単には辞められない」と言っていました。
ここで思うのは、特にブラック労働を強いるような塾の経営者は、顧客のことも従業員のことも見ておらず、考えているのは自分への身入りのことだけです。
これに対し、顧客である生徒、子供たちに真剣に向き合って、その人たちのことを真面目に考えているのは現場の講師たちであり、その人たちのおかげで塾の評判が保たれていると感じます。そこに経営者が貢献していることは何もありません。
同じような「辞められない理由」は、実は介護事業の現場に携わる人からも聞くことがあります。介護事業の場合は、そもそも事業者があまり利益を出せない枠組みになっていて、労働環境が必ずしも経営者の責任ばかりとはいえないので、塾の場合とは話が違いますが、同じように「自分が辞めると利用者や他のスタッフに迷惑がかかる」と言います。そうは言いながら、どこかで限界を超えると辞めざるを得なくなってしまう、そんな状況です。こちらでもやはりスタッフは、まず利用者のことを第一に考えています。
私は、ブラック企業などというものは、いずれ働く人が集められなくなり、市場原理で淘汰されていくものだと思っていますが、こういう話を聞くと、それほど単純な話ではないとも感じます。真面目に仕事に向き合う人たちがいるおかげで、ブラック企業やブラック労働が生き残ってしまうということです。
「ブラック労働」を強いるような経営者は、こういうことを一体どのように捉えているのでしょうか。正直言って私は、「こういう人にはバチが当たればいいのに」などと思ってしまいます。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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