【小倉正男の経済コラム】安倍晋三首相の窮地、支持回復には政策しかない

2017年7月6日 13:22

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■秋葉での発言で火勢が増す

 安倍晋三首相のJR秋葉原駅前での発言がメディアなどで批判を浴びている。都議会議員選挙の最中に、「こんな人たちに私たちは負けるわけにいかない」と演説したのが発端となっている。

 聴衆の一部が集団でプラカードなどを掲げて、演説を邪魔して、「安倍帰れ」「安倍辞めろ」などと騒然とした。それに安倍晋三首相が応酬したのが、「こんな人たち」発言である。

 こんな発言までメディアに批判されているのだから、やや末期的な感がしないではない。 「秋葉」には、火よけとか鎮火といった意味があるが、火勢が増したわけである。

 森友学園、加計学園問題と続いて、「忖度」「お友達」といったことが言われてきた。そして、「このハゲー!」といった豊田真由子議員などの不祥事連発が止めを刺している。

■付け焼き刃になるのでは・・・

 結局、規制緩和などの政策が生半可というか、中途半端だったことが底流にあるのではないか。

 内閣改造など人事で支持や人気を挽回するというが、それは付け焼き刃になるとみられる。人気のある小泉進次郎議員を大臣に取り立てるというのだが、一時的な効果はあっても長続きするかどうか。

 人事も下手にやれば、ますます混乱のもとになる。人事は争乱のもと――「滞貨」「悪貨」を用いれば、さらに混沌に突入する。 人事好きの人事下手で、やればやるほど全体の不満や疑念を生むのが人事である。

 秋葉社にお参りして、火事よけを祈ったほうがよいような話となる。しかし、付け焼き刃では、お参りしても効き目はどうかということになりかねない。

■支持回復には政策回帰しかない

 アベノミクスの原点に戻れば、規制緩和といった経済政策を本気で進めることが支持や人気を回復する本筋であるに違いない。

 国(=官庁)が、需要予測までして「企業誕生権」を規制するといった社会主義的な体質がニッポン株式会社の岩盤になっている。気力を振り絞って、そこに取り組むべきである。

 雇用は増えた。それはよいことである。しかし、賃金は騰がらない。デフレが続き、インフレも起きない。フィリップス曲線は作用していない。

 株式市場も以前からみたら回復した。しかし、市場は揉み合いというか停滞の兆しが濃厚だ。上に行く勢いはみられない。

 やはり、政策が求められている。「こんな人たちに私たちは負けるわけにいかない――」。それなら本質的な経済政策を打ち出すことしか打開策はない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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