ヤマト運輸の動きに思う「やめるサービス」「続けるサービス」を決める難しさ

2017年6月26日 11:56

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 ヤマト運輸が、宅配便サービスに関する料金値上げ、時間帯配達で一部の扱いの取りやめなど、サービスの見直しをおこなっているという記事を、最近よく目にします。

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 ネット通販の利用拡大による扱う荷物量の増加、当日配達や時間帯配達、さらには再配達のサービスによる現場へのしわ寄せと長時間労働の常態化があり、ドライバーの労働環境を改善することが主な目的ということです。
 今のところはドライバーとして働く人たちへの同情もあり、表立った会社批判もなく過ぎていますが、中にはサービス廃止で困る人たちもいるでしょう。

 このことについて、すでに相談役も退任した元会長の都築幹彦氏のインタビュー記事があり、過去の反省や現経営陣への叱責とともに、こんな言葉が載っていました。
 「当日配達をやりますと言って、自分たちから始めたことなのに、今度はできないからやめますでは、サービスの後退で最大の信頼失墜だ」
 「宅急便は全国翌日配達を基準につくっており、それを当日配送にしたり、さらに時間指定の配達もあったりしたら、ドライバーを酷使することになるのは当然で、そもそも事前に十分に検証してからサービスを始めたのかが疑問だった」

 一度サービスを始めたからには、それをあてにする人たちは必ずいる訳で、そう簡単にやめるものではないし、だからなおさら始める前に十分な検証が必要なのに、それができていなかったのではないかということです。「サービスを始めるまでは慎重に、始めたからには絶対に続ける」ということで、顧客視点ということでは、一つの考え方だと思います。

 ただ、この「サービスを廃止する」ということに関して、特にウェブサービスなどの分野では「始めたからには絶対に続ける」という考え方はあまりないように思います。
 もちろん、主要なサービスがある日突然無くなることはないですし、それなりに利用者がいるサービスであれば、会社の経営上の問題があっても、サービス自体はどこか別会社が買い取って引き継いだりしますので、実害を被ることは少ないです。

 それでも、結構急に仕様が変わったり、利用条件が変わったりということは、グーグルやマイクロソフトのようなメジャーな会社のサービスの中でも、わりとよくあることです。
 また、実害がないということで言えば、そのサービスの利用状況などを緻密に確認しながら、変更や廃止の対応をしているということでしょうし、そこからもっと利用者が多いサービスに注力するとか、採算性を良くして新たなサービス開発をするとか、そちらの方が健全だという気がします。

 このように、「サービスをやめる」ということに対するハードルは、昔に比べてずいぶん下がっていると思いますが、それでもやっぱり簡単にはやめられないものがあります。
 例えばFAXなど、私は年に数回使うかどうかというレベルですが、一応そのための番号は持っています。企業の製品問い合わせ窓口でも、たぶん件数としては相当に少なくなっていると思いますが、FAX対応はまだやめられません。一度それなりに普及して定着したものは、やはりやめることが難しくなるのでしょう。

 かつて流行った音楽MDなどは、最近の若者は存在自体を知らない、現物は見たことがないといいますし、プレイヤーの生産はすでに終了しています。今は修理対応などの顧客サービスだけが生き残っていて、これもいずれなくなるのでしょう。ただ、それをいつにするか決めるのは、やっぱり難しいことだと思います。

 ヤマト運輸のように「始めたからにはやめない」という考え方は、安心感がありますし、素晴らしい心構えだと思いますが、最近の世間の様子からすると、少しスピード感や変化対応力に欠けるようにも思います。

 やめるサービス、続けるサービスを決めるのは確かに難しいことですが、これからはあまり続けることにこだわり過ぎない、割り切りが必要な時代になってきているのではないでしょうか。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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