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「採用が得意」という会社に見える問題
「社員を見る目には自信がある」「採用が得意」と公言する社長にお会いしたことがあります。
新卒も中途も、採用活動は社長が一手に取り仕切っていて、会社説明を徹底的に時間をかけておこなうなど、採用するプロセスにはかなり手間ひまをかけています。
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社長が「自信がある」と言うだけのことはあり、採用した社員の皆さんの仕事への取り組み方は、とても真面目です。よく教育されているとも思います。
もちろん退職する人もそれなりにはいますが、短期間で辞めてしまうような人はほとんどおらず、定着率も良い方です。こんなことから見れば、「採用活動」としてはとてもうまくいっていると言えるでしょう。
ただ、この社長が気づいているかいないか、たぶん薄々わかっているとは思いますが、私から見ると、この会社の採用には問題を含んでいるように思います。たまたま何人かの社員にお会いする機会があり、そこで感じたのは、「同じようなタイプの社員」ばかりになっているのではないかということです。
これは、この会社の業務内容にも関係がありますが、地味な仕事をコンスタントにコツコツ続けられるような人材がほとんどです。過去には違うタイプの人材が入ってきたことがあるようですが、結局辞めてしまったという経緯から、採用を最適化した結果がそうなっているということのようです。
もう一つ、これは社長の性格との兼ね合いですが、わりと細かいことまでああしろこうしろという人なので、他人から言われることをあまり疑わずに素直に受け入れるタイプの社員が多いです。
良く言えば「素直」ですが、反面では「問題意識が足りない」「自分で考えない」「前に出ようとしない」というところがあります。ただ、たぶんそれが社長の好みのタイプであり、仕事をする上では相性が良いのだと思います。これまでの経験も踏まえて、自然にそういう人を選ぶようになっていったのでしょう。
この会社は、今のところは仕事も組織運営も順調ということで、まだ大きな問題はないようですが、近いうちに確実に起こると思われるのは、「リーダー不足」という問題です。
今のところは無事に組織は回っていますが、そこでのリーダー役はすべて社長であり、現場のかなり細かい部分の指示命令も社長がしています。社長自身は「任せている」とは言いますが、今いる社員の大半は、社長から事細かく指示される環境に順応した社員たちなので、その指示がなくなると、確実に組織は回らなくなります。社長のかわりにリーダー的な役割をつとめられそうな社員は、残念ながら見当たりません。
もう一ついえることとして、社員の多くは「新しいことが苦手」ということです。
これは、今の社内環境に合う人材として採用され、さらにその環境に順応してきた人たちだということもありますし、社長の好みのタイプがそうだったということもありますが、「今が最適」という現状肯定型の人たちは、何かを改善しよう、改革しようという意欲が、たいがい薄いものです。不満や問題意識があってこその改善意欲というところがあります。
社員の中には「私はずっと社長についていきます」などと言う人がいて、社長自身もそれはうれしい感じだと思いますが、「ついていく」という人はいても、「自分が引っ張っていく」という人は一人もいません。そういう人がいても辞めてしまったのかもしれませんし、そういうタイプは扱いづらいと初めから排除していたのかもしれません。
社長一人が熱心に採用活動を続けた結果、確かに安定したとはいえるものの、辞めずに順応できるということを重視したために、今の業務に最適な人ばかり集まってしまったことや、社長自身が扱いやすい人材のタイプに偏ってしまったという状況があります。
やはり、一人の目で、一人の好みで採用を続けると、どこかに偏りが出てきます。そもそも、正反対のタイプの人材を組み合わせた方が、持ち味も正反対なのでシナジー効果につながります。
ダイバーシティ、人材の多様性ということが言われますが、いかに多様な人材を受け入れて、その人たちそれぞれに適切な役割を与えるかということは、組織の発展のためにはとても重要なことです。
似た者同士、気の合う者同士だけでは、できないことがたくさんあります。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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