関連記事
その昔、言葉遣いを注意されてからずっと思っていること
私がまだ20代の頃は、会社の人たちとずいぶん頻繁に飲みに行く機会がありました。そんな時代だったということもありますし、そういうノリの会社だったということもあります。
そんなある日、社長ほか数人と二次会へ向かった時のことです。社長が常連の店で、同じく常連とおぼしき初老の男性がいました。それなりに酔っていたようですが、会ったこともないその人から、いきなり「お前は社長に対する言葉遣いがなっていない」と説教が始まりました。
別にタメ口を聞いていたわけでもなく、いつもと同じ普通の敬語で会話していて、でもお酒の場なので若干は緩かったかもしれないという程度の自覚です。
その時の私がどうしたかというと、ものすごく頭にきて、こんな言葉で反撃していました。
「自分と社長の間で成り立っていることを、初対面で何も知らないあなたからとやかく言われる筋合いはない!」
いま思えば、言葉が過ぎていて失礼この上ないことですが、私自身の基本的な考え方は、今でもこの時とほとんど変わっていません。それは、“社長”という肩書に対して尊敬を示せと言われように思ったからで、私は「権威に媚びろ」と強制されたように感じ、それは私にとっては必要がないことだと思ったからです。頭に来たという理由には、そんなことを何も知らない第三者から、その人の一方的な価値観で言われたからということもあります。
そもそも言葉遣いをどうするかというのは、そんな肩書、権威うんぬんの次元の問題ではないと思っているからです。
ここ最近は新人研修の季節ということもあり、いろいろな場で「敬語」に関する話題に出会います。「新人の言葉遣いが・・・」と愚痴をこぼす担当者も大勢います。
これに関して、いろいろなセオリーはあると思いますが、私が思っているのは、「言葉遣いというのは相手との心理的な距離感次第で正解は変わる」ということです。それは面識が少ない人、初対面の人、親しくない人に対しては、やはり敬語が基本であり、あとは相手との距離感の縮まり具合によって、言葉のニュアンスが変わってくるということです。
最近の若者は、敬語ではかえって壁を作っている感じがする、親密でない気がするということで、あえて敬語を使わずにタメ口のような話し方をするということがあるようです。ただ、私の場合は、ほぼ初対面のような相手から、いきなりタメ口で話されたら、やはりイラっとします。「お前とはまだ友達じゃない」と思います。
ただ、付き合いを重ねていく中で、お互いがそういう関係になることはあります。私の場合は相手が年齢不詳という付き合いも数多いので、友達言葉で会話するけれども、あとで年齢を知ったら一回り以上違っていたというようなことはたびたびあります。
こう言う関係は、相手がどんなに年上でも、社長でも先生でも大臣でも変わりません。相手の素性をよく知らない、面識が少ないとなれば、やはり始めは敬語です。いきなり上からものを言ってくるような人は、どちらかといえば年長者に多いですが、私はやはりイラっとします。
ただ、年長者の場合は、相手に気を使わせないため、あえてフラットな関係に持ち込んでくれるような、愛を感じるなれなれしさで接していただくことがあるので、そういう時は話が別です。その違いは、絶対に威張らず、自分や他の人たちに対する敬意を感じるということです。
私自身も社長、代表という立場はありますが、それは組織上の役割として上だというだけで、人間的、人格的に上ということではありません。
そんな立場に関係なく、たいして知らない人からいきなりタメ口はあまり気分が良くないですし、自分が嫌なことは相手にもしないようにとは思います。ただ、果たしてそれで足りているかはわかりません。中には、言葉遣いは緩くてもついそれを許せてしまうような、得するタイプの人もいます。
言葉というのは時代とともに変わっていくものですから、私の感じ方も古すぎたり、厳しすぎたりするのかもしれません。
ただ、敬語を含めた言葉遣いというのは、きっとそういうものなのだと思います。日本語は最も語彙が豊かな言語だと言われます。いくら時代が変わったといっても、相手を不快にしない表現ということだけは、気を付けていたいと思います。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
スポンサードリンク