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「高いサービスレベル」にいつの間にか慣れすぎていないか?
最近のカフェやファストフード店では、基本的にセルフサービスで片付けも自分ですることになっていますが、お店の人がいると、「こちらでお預かりします」「そのままで結構です」などと言われて片づけてくれることがあると思います。
これはつい先日、都内のあるカフェでのことですが、お店を出るので片づけ場所に行こうとすると、後ろから小声で「やっときますよ」と女性の声がします。ふと振り返るとお店の人で、たぶん高校生か大学生くらいのアルバイトらしい女性でした。「あ、お願いします」というと、無言でうなずいてちょっとはにかんだ笑顔でいます。
そのまま店を後にした私には、それが単純に気をつかってもらったという有り難さの感覚がほとんどでしたが、その反面、「何となくいつもと違う」と感じていた自分もいました。
その違いを考えてみると、かけられた言葉がいつもとはちょっと違ったということと、接し方と態度のちょっとした違いだということに気づいた訳で、いつも聞いている定番の言葉や接し方ではなかったということでした。そこでいろいろ考えたことは、「こんな感覚って本当に必要なことなのか?」ということです。
たぶん、いつもの感覚というのは、大きな声と満面の笑みで、「こちらで結構です」「お預かりします」と敬語で言われることだったように思います。これはきっと、接客のプロからしても、「やっときますよ」の言葉遣いはダメ、うなずいて無言はダメ、声が小さい、礼儀が良くないなどとなるのでしょう。そして、こういうことでクレームを言うお客も、世の中にはきっといるでしょう。
ただ、この時に私が困ったことは何一つありません。向こうから気づいてくれて声をかけてもらっていますし、笑顔で対応してくれています。確かに言葉遣いは接客業的ではありませんし、反応が薄いということはあるかもしれませんが、無視されたり不機嫌にされたりした訳でもなく、何か満たされないことがあった訳ではありません。
私の印象では、まだお店のアルバイトを始めたばかりのようなイメージだったので、きっとこれから接客指導などをされるのだろうと思いますが、まだそれほどの指導をされていない段階で、自分の気づきで、できる範囲の声掛けでサービスしようとした姿勢は、私は好感が持てることであり、こういうことはもっと評価しても良いことのようにも思いました。
最近は業種を問わずにどこの会社でも、接客マナーや顧客サービスには力を入れていると思いますが、何か必要以上に画一化している気がしますし、そこで必要以上のオーバースペックになり、さらにそれに慣れ過ぎてしまっていると感じることがあります。
過当競争の中で他社に先駆けるということから、各種のサービスレベルがどんどん上を目指してきた結果、いつの間にかその高いサービスレベルが当たり前になり、逆にそれがクレーマーなどを生みやすい環境になってしまっているように思います。
私はあのカフェで自分なりに気遣って、頑張って声をかけてくれた彼女の接客は、十分に心地よいものでしたが、接客セオリーには反することなのかもしれません。ただ、そこまで高いサービスレベルを目指していくと、こんな本心からのサービスには出会えなくなるのでしょうし、高いレベルに慣れ過ぎてしまうと、そこで生まれる感情は、ただの減点主義のクレームだけのように思います。
日本のサービスレベルは最高だといわれますが、必要以上のオーバースペックは、そろそろ考え直しても良いのではないでしょうか。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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