英中央銀行、ポリマー紙幣原料に添加の獣脂代替品、調査結果発表

2017年4月3日 05:04

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記事提供元:スラド

昨年9月に発行が始まったポリマー製の英5ポンド紙幣は、原料のポリマーペレットに微量の獣脂が添加されていることが判明して問題となった。英中央銀行では、今後の10ポンド・20ポンドポリマー紙幣の発行に向け、代替の添加物などに関する調査結果を公表し、意見を募集している(英中央銀行の発表The Registerの記事)。

添加物として使われている獣脂の成分は脂肪酸に由来するもので、ポリマー紙幣の原料となるポリプロピレンの生産過程で世界的に使われているものだという。ポリマー紙幣は世界30か国以上で使われているが、添加物についてはこれまで注目されていなかった。しかし今回の調査の結果、世界のポリマー紙幣はすべて獣脂の成分を含むことが判明したそうだ。

代替品としては植物油脂が検討されているが、大豆脂や菜種油、ヒマワリ油などは不飽和脂肪酸が少なく、水素添加が必要だ。そのため、不飽和脂肪酸を豊富に含むパーム油やココナッツ油が候補として挙げられている。ただし、ココナッツ油はパーム油と比べて生産量が少ないことなどから、現実的な代替品はパーム油しかないという。

しかし、パーム油は開拓による森林破壊など環境負荷が大きく、プランテーションでの児童労働を含む違法労働などの問題もある。「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」といった団体による環境に配慮する枠組みも存在するが、RSPOの認証基準には抜け穴があるといった批判も出ている。一方、獣脂は食肉生産の副産物であり、家畜の飼育は環境負荷が大きいものの、持続可能な生産方法であれば無視できるレベルになるとのこと。

ポリマー紙幣への獣脂添加が他国で問題になるかどうかは不明だが、英中央銀行は2010年平等法(EA 2010)により、すべての人を平等に扱うことが義務付けられており、これには宗教や信条の違いなども含まれる。ポリマー紙幣への獣脂の添加はごく微量であっても、宗教面・倫理面から触れてはいけないと考える人々への影響が大きい。これに対し、パーム油は環境に配慮すべきと考える人々に影響を与える。世界自然保護基金(WWF) UKでは、RSPO認証品でないならパーム油を使用すべきではないとの考えを示している。

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