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弁護士にも活用してほしい「法務デューデリジェンスチェックリスト」
【連載第4回】先ごろ書籍『法務デューデリジェンスチェックリスト』を出版した弁護士・佐藤義幸氏の連載第4回。今回は、弁護士や外部専門家など、法務デューデリジェンス(法務DD)の業務に直接携わる人にとっての当チェックリスト活用の意義について語っていただいた。
生産性の高い法務DDを可能に
― 法務担当者や投資家の視点で見た「法務デューデリジェンスチェックリスト」活用の意義と価値についてうかがいましたが、実際に法務DDを行う弁護士さんにどう役立つのかをお聞きしたいのですが。
佐藤:このチェックリストを活用することにより、法務DDの生産性は確実にあがると思います。
少し前までは、M&Aや法務DDを取り扱える法律事務所が少なかったため、今と比べれば高い報酬が請求しやすかったです。
ですが、そうした時代でさえ、法務 DDが「儲かる」仕事であったかといえば、実は必ずしもそうとはいえない面もありました。
高い報酬をもらう以上は、何らかの「成果」を出さなければならないというプレッシャーが働くのか、必要以上に詳細な報告書になる傾向があり、膨大な時間を費やされて法務DD単体では「赤字」となることも少なくなく、必ずしも生産性はあまり高くありませんでした。
まして現在では、法務DDも一般化してきましたので、いかに効率よく、クライアントのニーズを満たす調査を行うかがポイントとなっており、生産性の向上は欠かせません。
そのためには、法務DDを開始する前に、どの分野をどういったレベル感で調査を行い、どのような報告を行うかについて、クライアントと法務DDの実行部隊との間で共通認識を持っておくことが不可欠となります。
その際、「法務デュー デリジェンスチェックリスト」のような叩き台があれば、効率的に作業を行うことができ、役立つと思います。
また、法務DDを経験したことのある弁護士でも、数多くの調査対象項目のうちの1つか2つくらい、たとえば「契約」だけとか「知的財産」だけとか「人事労務」だけしかやったことがない、という人が多いと思います。そういう弁護士が他の分野にも興味を持つきっかけになってくれればいいですね。
「法務デューデリジェンスチェックリスト」の使い方は千差万別
― それでは、法務DDにあまり縁のない弁護士さんにはどうですか。
佐藤:M&Aなどにはあまり縁のない弁護士でも、顧問先の会社が法務DDの対象となった場合、いつ相談が来てもいいように、法務DDにおいてどういった点が調査対象となるかは知っておいて損はないですよね。
契約書の作成やレビューを 行う際にも、法務DDという観点からどういった条項が問題となりやすいかについては、当然、意識しておくべきでしょう。また、たとえば顧問先から、「うちの会社の従業員の労働時間管理について、何か問題ありませんか?」などと法律相談を受けることはよくあると思いますが、その際でも、このチェックリストを利用すれば、チェック漏れを防ぐことができるでしょう。
このチェックリストはあくまでもひとつのツールですので、使い方は人によって様々でよいと思います。その人の創意工夫によっていろんな使い方をしてほしいですね。
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最後に
―「法務デューデリジェンスチェックリスト」は、知財分野も詳しいですね。
佐藤:以前『知財デューデリジェンス』(2010年/商事法務)という600ページ以上に及ぶかなりボリュームのある本を書いたのですが、今回の『法務デューデリジェンスチェックリスト』は、その後の法改正なども反映させ、前回の本の中に入っているエッセンスを凝縮してみました。
そのため、手間がかかりすぎて、通常の法務DDでは調査対象とならないことが多いかもしれない事項も入っています。本来は調査しておくべき重要事項であることに変わりはありませんので、特にセルフチェックの際にはお役に立てるのではと思います。
― ⾧い時間ありがとうございました。最後に、「法務デュー デリジェンスチェックリスト」に関して、今後の抱負をお聞かせ下さい。
会社がIPO準備に入る場合、監査法人等のショートレビューを受けて上場に向けての課題抽出を行いますが、同様に、法務調査を行う「リーガル・ショートレ ビュー」を普及させたいですね。
弁護士が会社の法務担当者と一緒にチェックリ ストを使って、関係書類の整理や内容のチェックを行っていくというイメージです。
この共同作業を通じて、無用な紛争のために企業の成⾧にストップがかからないようにできればと願っています。
そのためのツールとして、本書はとても役立つと思います。一人でも多くの方々に、ぜひ一度、ご覧いただけましたら幸い です。(本連載は今回で終了です)
佐藤義幸さん
弁護士・ニューヨーク州弁護士90年代の半ばからスタートアップ企業の法務・知財戦略支援、ベンチャー投資ファンドの組成・投資支援、IPO支援など、多くのベンチャー関連業務に携わる。また、産業再生機構によるカネボウの支援案件に従事して同社の多数のノンコア事業や本体のバイアウトに携わるなど多くのM&A案件も手がける。電子マネーのフィージビリティ・スタディに始まり、医療クラウド、シェアリング・エコノミーなどその時代の新規事業案件にも積極的に取り組んでいる。〔略歴〕山口県下関市出身。1992年京都大学法学部卒業。1994年大阪弁護士会弁護士登録(1997年東京弁護士会登録替え)。2000年西村総合法律事務所(現 西村あさひ法律事務所)に移籍。2001年ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)。2003年ニューヨーク州弁護士登録。2005年同事務所パートナーに就任、現在に至る。〔主な論文・書籍〕『知財デューデリジェンス』(商事法務、2010)、『解説 改正著作権法』〔共著〕(弘文堂、2010)、『クラウド時代の法律実務』〔共著〕(商事法務、2011)、「クラウド・コンピューティング関連法の実務的諸問題」〔共著〕NBL No.976号- No.981号(2012)、『知的財産法概説<第5版>』〔共著〕(弘文堂、2013)、『新しいファイナンス手法』〔共著〕(金融財政事情研究会、2015)ほか。 元のページを表示 ≫
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