【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆トランポリンか、トランペンスか◆

2016年11月20日 09:40

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記事提供元:フィスコ


*09:40JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆トランポリンか、トランペンスか◆


〇早くも現実の政策動向探る攻防〇

11日のドル建て日経平均終値は162.84ドル。一時、急落場面で157ドル台に突っ込んだ後戻りつつあるが、米大統領選前の165ドル前後に戻り切れていない。先週後半の日経平均の上昇は円安効果が大きかったと言える。

円安の持続性に懐疑的な見方では、株価も再度調整するとの見方になる。ドル円は107円を巡る攻防に入っているが、107.50円を抜けてくるようだと目線は105~110円ゾーンに移行する。決め手は米債券相場(11日はベテランズデ—で休場)。指標10年物国債利回りが、昨年利上げ開始前の2.3%水準に上昇するようだと、円安基調は持続するとの見方が優勢になると考えられる。一方、ドル建て日経平均に上昇余地があるとの見方では、保護主義的ムードの是正やインフラ投資の活発化など、前向きな企業投資活性化が条件となろう。米企業収益は上方修正が続き、11日時点のS&P500指数採用企業(既発表455社)の第3四半期増益率は4.1%。71%がアナリスト予想を上回っている。また、規制緩和期待で上昇している銀行株(S&P500銀行株指数は9-11日に10.2%上昇)のPERは11.2倍水準、全体の16.9倍から見て出遅れ感がなお強いと見られている。日本株でも、当面出遅れ感が支えると考えられる。

相場展開は強弱感がトランプ発言などでコロコロ変わる「トランポリン型」か、過激な公約を軌道修正しながら共和党色の強い政策に流れる(ペンス次期副大統領がグリップを握る)「トランペンス型」かで分かれることになろう。11日に政権移行チームのトップにペンス氏が任命され、今のところ、後者の色彩が強いと思われる(首席補佐官に共和党全国委員会のプリーバス委員長が起用される)。議会多数を占める共和党の主流派と調整できれば、安定感は増す。

トランプ氏は「移民・医療・雇用」を優先する意向を表明した。注目のオバマケアは全廃姿勢でなく、部分的修正ないしは一部存続姿勢に転換している。注目の不法移民対策では、「国境の壁」からフェンスに格下げし、週明けのメキシコ・ペソ相場が最安値水準から1%超急伸している様だ。12日米税関・国境警備局が発表した拘束された不法移民数は10月4万6195人、9月の3万9501人、8月の3万7048人から急増する傾向にあり、警戒要員の追加派遣を表明した。急増はトランプ政策への期待を高めると思われる。トランプ氏は当面、12年の大統領令(未成年の時に違法入国した75万人を国外退去から守った)14年大統領令(必要手続きを踏んでいない犯罪歴の無い約400万人を国外退去免除対象にした)の撤廃に動く公算があると見られている。

また、シカゴと東京で高速データ伝送網の構築に動いていると伝えられた。詳細は非公表で、トランプ政策以前から計画されていたようだが、現実のプロジェクトが次々と出てくれば、期待感の持続に貢献しよう。まだまだ不透明な部分は多いが、17日の安倍首相との会談を軸に、過激公約の修正、ソフトランディングと実効性を探る展開が想定される。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/11/14号)《WA》

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