通貨間の自由競争が許される世界【岩村充が語るビットコインと仮想通貨の現在・未来(2)】「FISCO 株・企業報」より

2016年10月13日 15:28

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記事提供元:フィスコ


*15:28JST 通貨間の自由競争が許される世界【岩村充が語るビットコインと仮想通貨の現在・未来(2)】「FISCO 株・企業報」より
 


ビットコインのマイニング(取引記録の承認作業)には、それ専用に組み上げた非常に規模の大きなハードウェアが必要となります。そしてそこで消費される電力も膨大な量となります。そのために、マイナーたちは電気代や土地代の安い国に大規模な拠点を構えるほどです。

それだけの投資に見合う報酬が、今後もマイニングに期待できるのか。マイニングを止めないために、徐々に減っていく報酬を補う仕組みが構築できるのか。ビットコインのそういった問題点を指摘する声は後を絶ちません。

そして、ビットコインのそうした問題点を解消するようなシステムをもった仮想通貨が、現在数多く出現してきていることも事実です。しかし、仮想通貨の世界でそうしたビットコインに続く仮想通貨は、まだそれほど大きな勢力となり得ていないことも、また事実です。

それはなぜかと言えば、現状ではビットコインがあればそれで足りている、いろいろ問題はあるけれど、ビットコインがまずは第一候補だと、多くの人が感じているということなのでしょう。

さらに言えば、仮想通貨に理想の存在はない、ということです。ビットコインのような通貨もあれば、それを改良したというさまざまな通貨もある。そのようにいろいろな仮想通貨が存在し、競争して、使う人にいくつもの選択肢がある、ということが、仮想通貨を語るうえでは大切なポイントなんです。

中央集権的に管理されるものでなく、使う側が自由に選んで使えること。集中や収斂を求めずに多様性があること。それが仮想通貨のあるべき姿だと私は思います。理想の仮想通貨とは? という設問は、理想の冷蔵庫とは? とか、理想のジャケットは? とかと同じで、あまり意味がありません。使う人それぞれが好きなものを選べばいいのです。

オーストリアの経済学者フリードリヒ・ハイエク(1899~1992年)が「貨幣発行自由化論」で説いたような、中央銀行は不要で通貨間の自由競争が許される世界。その中で最も健全で安定した通貨が発展していく。そんな状況が今、仮想通貨の世界で起こり始めているのです。

(岩村充/早稲田大学大学院商学研究科教授)

※本稿は実業之日本社より刊行されているムック「Jマネー FISCO 株・企業報 2016年秋冬号」の記事からの抜粋(一部修正)です。記事の全編は、現在発売中の「Jマネー FISCO 株・企業報 2016年秋冬号」をご覧ください。《FA》

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