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一尾仁司の「虎視眈々」:◆「統計相場の波乱」◆
*19:46JST 一尾仁司の「虎視眈々」:◆「統計相場の波乱」◆
〇英、米統計で波乱も米雇用統計待ち〇
昨日の東京時間でじり安基調にあったドル円は、夕刻の欧州時間に104円まで円安が進んだ。直後のNY時間朝(欧州午後)に一転して急伸し、103.25円を挟んだ揉み合いで戻って来た。まるで、米雇用統計での波乱のミニ予行演習を行ったような展開だった。
英8月製造業PMI(購買担当者景気指数)が10ヵ月ぶりの高水準(53.3、市場予想49.0、7月は48.3とEU離脱決定で3年ぶりの低水準)となったことを受け、英国の追加利下げ観測が一気に遠のいた。つれて、英ポンドは1.31ドル台前半から一時1.33ドルを突破、急伸した。英ポンド売り持ちの買戻しが起こったと見られ、合わせて円ロングの手仕舞いが強まったと考えられる。その直後に発表された米ISM(供給管理協会)8月製造業景気指数が予想外に悪化(前月比3.2ポイント低下の49.4、50割れは半年ぶり)、一転してドル売りとなった。NYダウは一時100ドル強下落したが、終値は18.42ドル高、米国債利回りはほとんど変わらず、横ばい(10年国債で1.5681%)だった。
8月実績の雇用統計は弱含みになる傾向があるとブルームバーグが伝えている。雇用者数増18万人の予想だが、予想通りであれば1998年以降で最多となる。過去19年で8月分は期待外れとなる頻度が最も高く(19回中15回)、平均で市場予想を3.6万人下回ると言う。S&P500は下回った場合0.4%安、上回った場合1.2%上昇。
〇増税感が消費圧迫〇
日経新聞2面で、「パート時給、秋に急上昇」と伝えた。10月に社会保険適用拡大と最低賃金引上げが重なるためで、時給1000円以上が定着する見通し。年収130万円未満の短時間労働者は社会保険対象外だったが、106万円以上(週20時間以上、従業員数501人以上などの条件が付くが)に引き下げられ、枠内に収まるよう、労働時間短縮を図る人が続出すると言う。流通、サービス業などの人手不足感が一気に高まると見られている。
配偶者控除見直し問題とも直結するが、影響は10万人規模で主婦パートを直撃する。安倍政権は「女性活躍」と旗を振るが、一般は「賃上げ」も含めて、増税のためと映る。消費不況が深刻化し、やれインバウンドの剥落、株価値下がり、物価上昇、政府統計の不備だとか、原因論議が活発だが、おそらく増税感が大きな要因だ。消費増税を凍結しても、マヤカシと実感する。政府は昨年8月以降、診察料や入院食費など医療費を値上げし、今回の社会保険適用拡大も含め、社会保障費全般の負担増を図ってきた。財務省が消費増税凍結を見越して、波状的に推進してきたとの見方もある。
これが、いわゆる内需関連株売り、輸出関連株買いに投影されているものと思われる。地方百貨店や大型スーパーなどの撤退報道も多く、地方を中心に不況感が根強い。日銀は次回「総括」のなかで、この問題をどう取り上げるのか、注目点の一つだ。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/9/02号)《TM》
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