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一尾仁司の「虎視眈々」:◆「スポーツ革命への期待」◆
*17:24JST 一尾仁司の「虎視眈々」:◆「スポーツ革命への期待」◆
●競技、観戦、安全対策など広範囲にIT革命浸透●
トラブル・オリンピックと揶揄されるリオ五輪開催が迫っている。昔から五輪やサッカーW杯、高校野球などスポーツイベント期間中は閑散相場と言われるが、今回は「無事開催・終了するか」を含めて目まぐるしく世界の動きが交錯すると思われる。その中で、「スポーツ革命」と呼ばれるIT化を核とするイノベーションが注目されそうだ。ビジネス的にIT革命がかなりのレベルに達するのは20年東京かも知れないが、少なくとも認知度向上のスタートになりそうだ。
スポーツへのIT技術導入で脚光を浴びたのは、15年秋のラクビーW杯イングランド大会。「世紀の番狂わせ」と言われた日本が南アを破った一戦だ。日本は「世界で最も準備されたチーム」と呼ばれ、データを駆使し、体力的・経験的劣勢を跳ね返した。「データが教えた勝負の3秒」と分析されている。ラクビー試合のデータ分析では、GPSやドローンなどを使い、速度、位置取り、展開パターンなどが分析され、練習から戦術作りに利用される。ラグビー以外にも、野球、バレー、ゴルフ、体操など様々な競技に広がってきている。試合運びや試技の高度化のみならず、微妙な判定への利用、ケガ防止への取り組みなど目的も多様化している。また、パナソニックと電通が20年東京で革命を起こすと提携したテレビ中継など「観戦」も大きな変化の波が出ている。
課題はこれらの「革命」がビジネスに繋がるかどうかだが、23日のNHK経済フロントラインでは、「スポーツビジネスは東京五輪までに11兆円に拡大する」との見方を伝えた。今年1月、米ラスベガスで開催されたテクノロジー展示会CESでは「スポーツ可視化時代の到来」をテーマに、様々な新技術・機器が紹介された。IT業界のみならず、エレクトロニクス業界、スポーツ用品業界などに変革をもたらし始めている。先進国はやはり米国で、大学からスポーツを軸とした都市再開発まで、大きな潮流となっている。早晩、市場のテーマにも浮上して来よう。
今年4月、プロ野球パ・リーグが米ハーバード大と提携し、「パ・リーグ・ウォーク」と呼ばれる「全国民健康化大作戦」を掲げたのも、その一例。最近、話題の「ポケモンGO」ヒットの一因に、ウォーキングの要素を取り入れたことを挙げる向きもある。ミズノが昨年5月に売り出した「スイングトレーサー」は野球のバッティングフォーム練習用にビッグデータを利用したデータサービス機能を持ち、スマホを利用して低料金で活用できる。中学から社会人まで広範囲な野球・ソフトボールチームを対象に大衆化を図るものだ。プロの世界で限定的だったものが、大衆化が進めば、ビジネスチャンスは一気に拡大すると期待される。スポーツは元々、治安、貧困問題などへの対処効果もあると見られてきたが、麻薬汚染、ドーピング問題、八百長事件など負の側面も拡大してきた。その混乱がリオには出ているが、健全性問題への取り組みも活発化しよう。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/7/22号)《WA》
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