ポスト参議院選挙のアナザー・シナリオを想定なら極低位値ごろ株の三ツ星銘柄へ=浅妻昭治

2016年7月11日 09:37

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

 「天下分け目」の参議院選挙であるはずなのに、兜町では、6月22日の公示日以来ほぼ無風選挙となっていた。与・野党の獲得議席数がどうなって勝ち負けがどちらに転ぶか、マーケット関係者のほとんどが話題にもしなかったのである。相場の先行きを左右する重要イベントとは捉えられなかったかのようであった。

 政権選択選挙ではない参議院選挙の特性はあるものの、それ以上に一つには、大手マスコミの世論調査による情勢分析で、序盤も終盤も与党の獲得議席数が、改選議席数の3分の2にも迫る圧勝となると観測されたことが要因だろう。与党が勝って、「一強多弱」体制がキープされると安心しきっていた。この情勢分析を受けて、せいぜい「与党が圧勝すると、憲法改正が最優先政治課題となって、経済対策は後回しになるのではないか」とか、「選挙運動中も経済対策の編成規模について大盤振る舞いのリップ・サービスも出てこない」とかのホヤキが漏れ出てきた程度であった。

 実際のところは、参議院選挙どころではなかったのである。6月24日の英国の国民投票で「欧州連合(UE)離脱」が決定してネガティブ・サプライズとなって株価が世界的なショック安となり、為替相場も急速な円高に見舞われ、この余震なのか本震なのか波乱が続いていた。前週末8日も、参議院選挙よりその日の夜に発表される米国の6月の雇用統計の動向の方が、株価へのマグニチュードが大きかった。

 その米国の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が、市場予想を10万人超も上回る28万7000人も増加し、ニューヨーク・ダウ工業株30種平均は、250ドル高と急反発し、昨年5月以来1年2カ月ぶりの高値となった。問題は、為替相場である。あの英国の国民投票時と同様に一時、1ドル=99円台まで急速な円高となり、1ドル=100円台央で東京市場に返ってきた。参議院選挙の方も、きょう10日午後8時の投票締め切りとともに放送開始されたテレビ各局の選挙特番で、早くも自民・公明の与党で改選議席の過半数以上の獲得が確実と速報され、このまま推移すれば、大手マスコミの情勢分析通りに安倍内閣の「一強多弱」体制が強化されることになる。

 となれば期待したいのが、円高対策、大型の経済対策などの「アベノミクス」の加速である。とくに円高対策は、7月20日以降に3月期決算会社の第1四半期(4~6月期)業績の発表が、本格スタートするだけに喫緊の課題である。為替介入によって円高を阻止し、日本銀行と連携して手っ取り早い株価対策も発動すれば、週明けのマーケットは、参議院選挙圧勝の「御礼相場」が発進することはほぼ間違いない。となれば、メーン・シナリオは、「EU離脱ショック」で大きく突っ込んだ主力輸出関連株の「リターン・リバーサル」買いを中心とする全面高展開だろう。

 しかし、今年の株式市場は、想定シナリオが次々に逆目、裏目に出て相次ぎ慌てさせられたことを忘れてはならない。杞憂と笑われるかもしれないが、取り敢えずメーン・シナリオが先行するとして、この一巡後にサブ・シナリオ、サード・シナリオ、さらに第4、第5のアナザー・シナリオまで算段して置く必要がある。参議院選挙後も円高阻止が不調となった場合のディフェンシブ株買いのサブ・シナリオ、ディフェンシブ株の上値が重くなったケースでは、7月15日に新規株式公開(IPO)されるLINE<3938>(所属部未定)を核とするIPO株活況相場のサード・シナリオなどといった具合である。

 この何番目のアナザー・シナリオとなるか定かではないが、頭の隅に止めて置きたいのが極低位値ごろ株相場である。市場には、株価が1ケタ、2ケタと低迷している限界銘柄、いわゆるボロ株がゴロゴロ転がっていて、成長資金を供給する株式市場の本来の意義について疑義を抱かせるまでに至っているが、その極低位値ごろ株が、英国の国民投票この方、やや動意付いているのである。もちろん極低位値ごろ株には、マネーゲーム好きのボロ株フアンが「ご意見無用」とばかり跋扈しているのが常だが、この動意は、もしかしたら市場参加者の多くがまったく想定していない相場の先行きを先取りしているのかもしれないと考えているへそ曲がり投資家好みの曲線的な相場シナリオでもある。

 当コラムは、無差別にボロ株のマネーゲームを勧めるわけではない。ボロ株には、株価が極低位に捨て置かれるそれなりの理由がある。多くが、赤字・無配継続で債務超過にまで陥ってるケースさえ少なくない。ただそうした極低位値ごろ株のなかにも、配当を実施し、PER・PBRR評価の投資尺度からみて市場平均を下回っている銘柄もある。いわば極低位値ごろ株のなかの三ツ星銘柄である。こうした三ツ星銘柄にアプローチしてみるのも、第4か第5かの相場シナリオとしてあるいは成立するかもしれない。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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