肺NTM症の発症が結核の発症者をしのぐ勢いで増加 7年前の2.6倍に

2016年6月14日 08:10

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記事提供元:エコノミックニュース

 非結核性抗酸菌(NTM)は、肺に感染することで慢性呼吸器感染症を引き起こす。肺NTM症は感染症法に指定されておらず、近年の疫学的実態は不明だった。今回、慶應義塾大学医学部感染制御センターの長谷川直樹教授、医学部内科学(呼吸器)教室の南宮湖(ナムグン ホウ)助教らは、国内における肺非結核性抗酸菌症の罹患率が、7年前と比較して 2.6倍と急激な勢いで上昇し、公衆衛生上、重要な感染症となっていることを報告した。

 今回、7 年ぶりにアンケート調査を行い、結核の罹患率と比較することにより、肺 NTM 症の罹患率を算出した。前回の全国調査と比較して、肺NTM症の罹患率は約2.6倍に上昇しており、患者数はすでに肺結核をしのぎ急激に増加していることが明らかになった。また、今回の調査で日本は世界の中で肺NTM症の罹患率が最も高い国であることも判明した。

 肺NTM症のうち、肺MAC 症が 88.8%と大多数を占め、全世界でも最も多いと報告されている。今回の調査により、次いで多い肺NTM症は、肺 Mycobacterium kansasii 症(0.6人/10 万人年)、肺 Mycobacterium abscessus 症(0.5 人/10 万人年)と判明し、特に肺NTM症の中で最も難治性の肺Mycobacterium abscessus症は、推定罹患率0.5人/10万人年と算出され、7年前と比較して約5倍と急激に増加していることがわかった。

 さらに、肺 Mycobacterium avium 症と肺 Mycobacterium intracellulare 症の分布が地域により大きく異なることが示され、肺 Mycobacterium avium 症の罹患率は東日本でより高く、肺Mycobacterium intracellulare 症の罹患率は西日本でより高い傾向が見られた。その結果、肺 Mycobacterium intracellulare 症の割合は、著明な「西高東低」を示した。

 今回の調査により、肺NTM症の発症が結核の発症者をしのぐ勢いで増加していることがわかった。結核は治療により、その大多数は治癒するが、肺NTM 症は現時点において、有効な治療はほとんどなく、有病率は結核よりもさらに高いと予想されるという。特に肺NTM症の中で最も難治性の肺Mycobacterium abscessus 症は、2007年の0.1人/10万人年から約5倍と大幅な増加を認めており、今後の対策が急務であると考えられるとしている。(編集担当:慶尾六郎)

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