中国経済が大減速のような報道は明らかな間違い

2016年4月18日 07:58

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記事提供元:フィスコ


*07:58JST 中国経済が大減速のような報道は明らかな間違い
中国国家統計局が先週発表した2016年1~3月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は前年同期比6.7%だった。
 中国の成長率が6.7%程度になるのは7年ぶりであることや、成長率の伸びの低下トレンドから、中国経済の減速・停滞が一段と鮮明となったという報道が目立つ。報道の仕方はまるで中国が景気後退(リセッション)に陥っているかのトーンだ。
 しかし、ここで注意しなければならないのは、中国経済は別にリセッションに陥ったわけでも低成長になったわけでもなく、「伸び」が従来からするとやや下がったというだけである点だ。
 中国のGDPは既に1000兆円を超えており、米国の約3分の2、日本の約2倍に達している。新興国や発展途上国などが貧しい環境から経済発展段階に入ると高度成長期を迎え、年成長率が連続して10%前後となるようなステージに入る。日本も戦後高度成長期を迎えた。
 しかし、高度成長期を終えると国民の生活レベルがある程度の経済レベルに達すると経済は成熟期に入り、いつまでも高度成長は続かない。永遠に高度成長期が続くような国はありえないのである。
 例えば、1000兆円にも達した中国のGDPが今後も毎年6.7%成長すると、10年で約2000兆円に達し、現在約1600兆円の米国を抜いて世界一の経済大国になる。また高度成長期の10%で毎年成長すると10年で2500兆円、20年で約6700兆円となり地球上のGDPがほぼ中国で占められることになってしまう。このようなことはあり得るのだろうか。
 もちろん中国のGDPだけがいつまでも地球の中で図抜けて成長することはありえない。規模的にみて中国の高度成長期は既に終わっているのである。
 従って、高度成長期の10%程度の成長率に届かないといって「中国経済の停滞が止まらない」などと報道するのは明らかに誤りである。
 中国のGDPが既に1000兆円を超えていることと成熟期に入ってきていることを再認識し、それに応じた成長率を考えるべきである。1000兆円規模のGDPで6.7%成長は驚くべき高成長といえる(もとより「中国の統計が正しければ」という極めて重大な但書がつくが・・・)。
 なお、我国においては、政府がGDPを約500兆円から約600兆円に増加させる目標を打ち出したが、経済が成熟し低成長となった日本においてはこれすらもほとんど不可能ではないかと言われている。
 中国経済についても、いつまでも高度成長期の「成長率」との対比のみで状況を報道すべきではない。《YU》

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