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毛づくろいを多く受ける「社交的」なニホンザルはシラミの寄生が少ない―京大・Julie Duboscq氏ら
毛づくろいを行うニホンザル。(京都大学の発表資料より)[写真拡大]
京都大学のJulie Duboscq日本学術振興会外国人特別研究員、Andrew MacIntosh特定准教授らの研究グループは、宮崎県幸島に生息するメスのニホンザルに寄生するシラミ数を検証し、繁殖期にあたる冬と出産期の夏には、毛づくろいされる機会が多い個体ほど寄生しているシラミが少ない傾向が見られることを明らかにした。
ニホンザルが行う毛づくろいには、個体同士の絆の強化や群れの中での順位の確認、ストレス発散といった機能の他に、シラミの卵の駆除という役割がある。シラミの卵は体毛に付着しており、ニホンザルが体毛からつまみ上げ口へ運ぶ姿がしばしば観察されている。しかし、毛づくろいを含めた宿主同士の接触はシラミなどの寄生虫や感染症が広がるルートにもなるため、集住によって被っている健康リスクだと考えることもできる。このリスクと比較してどの程度効果があるのかは明らかになっていなかった。
今回の研究では、宮崎県幸島に生息するニホンザルの中で、規模の大きな群れに所属するメスの個体19-20匹を対象に社会的ネットワークを構築し、その分析を行った。2014年1月~11月にかけて計142日間観察を行ったところ、ニホンザルの活動の中で毛づくろいが占める割合は27%にのぼること、ほぼメスの個体間かメスと子供のサルの間で行われていることがわかった。
さらに、社会的ネットワーク分析を行ったところ、群れの中で毛づくろいを受けている回数や頻度には偏りがあり、ネットワークの中心にいる数匹の「社交的な」メスが存在していること、夏と秋には毛づくろい以外にも個体同士が接触する頻度が増えていること、「社交的な」メスとそうでないメスの間でシラミの寄生数に差が見られ、特に夏と冬にそれが顕著であることがわかった。
研究メンバーは、「シラミの少ない『社交的な』サルは他にも健康上の利益を得ている可能性があります」「今回は毛づくろいの相手が多いとシラミの数も少なくなりましたが、他の寄生虫もこのような関係にあるかはまだ分かりません。寄生虫と宿主双方の生態や環境要因といった他の要素が寄生虫の感染にどのように影響を与えているのか、今後取り組む研究で明らかにしていきたいと考えています」と、コメントしている。
なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。論文タイトルは、「Network centrality and seasonality interact to predict lice load in a social primate」。
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