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サケなどに含まれる「アスタキサンチン」が学習・記憶能力を高めることを明らかに―筑波大・征矢英昭氏ら
ASXを摂取することによって海馬の神経新生と機能が高まる分子機構を示す図(筑波大学の発表資料より)[写真拡大]
筑波大学の征矢英昭教授とRakwal Randeep教授の研究グループは、抗酸化作用をもつカロテノイドの中で、最も強い効果をもつとされる天然由来色素成分「アスタキサンチン(ASX)」が、脳内の海馬が担う学習・記憶能力を高めることを明らかにした。
エビやカニなどの甲殻類やサケに豊富に含まれている天然の赤い色素ASXは、強力な抗酸化効果をもたらす次世代の天然サプリメントとして期待されている。ASXは血液脳関門を通過して脳内へ移動し、神経細胞に直接作用することで神経疾患モデル動物に対する神経保護効果が知られているが、ASXが海馬機能にもたらす効果については解明されていなかった。
今回の研究では、海馬が担う学習・記憶能力に関与する海馬神経新生を高めるのに効果的なASX 濃度を明らかにするため、おとなのマウスにプラセボ(偽薬)、異なる濃度のASX(0.02%、0.1%、0.5%)が混じった飼料をそれぞれ4週間自由に食べさせた。
その結果、海馬の細胞増殖は0.1%と0.5%のASX摂取群で有意な増加が認められ、神経細胞へと成熟した数は0.5%のASX摂取群でのみ有意に増加することが明らかになった。
そこで、神経新生を高める0.5%のASX摂取が海馬機能に与える影響について、動物における空間学習と記憶能力を評価する典型的な実験手法であるモリス水迷路を用いて評価した。その結果、プラセボ群と比較して、4週間の 0.5%濃度のASX摂取によって、学習能力と記憶能力が有意に向上することが明らかになった。
また、4週間のASX摂取は、Prl、Itga4、Il4の増強を介した細胞内シグナル伝達経路によって神経新生を促進し、記憶能力を高めることも示唆された。
今後は、ASXの分子機構に関して、遺伝子欠損や阻害剤を海馬組織や細胞に仕向ける標的指向化実験を行うことで、より詳細な機構解明が明らかとなれば、健康食品や創薬の開発につながることが期待される。
なお、この内容は「Molecular Nutrition and Food Research」に掲載された。論文タイトルは、「Astaxanthin Supplementation Enhances Adult Hippocampal Neurogenesis and Spatial Memory in Mice」
(和訳:アスタキサンチンの摂取はマウスの成体海馬の神経新生と空間記憶能力を高める)。
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