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フォルクスワーゲンの排気ガス不正による死者数の推計
フォルクスワーゲンがディーゼル車の排気ガス試験で不正を行っていた問題について、米環境保護局(EPA)は対象車の窒素酸化物排出量は基準の10~40倍に上るとしつつ、所有者による使用は問題ないとしている。しかし、米国では窒素酸化物が原因で年50,000人が亡くなっていることから、不正により増加した窒素酸化物による死者の数についてさまざまな試算が行われている(Consumeristの記事、Arizona Daily Starの記事、The New York Timesの記事、Fortuneの記事、Voxの記事)。
APではコンピューターを用いて統計的な分析を行い、不正により米国で増加した死者の数を2015年だけで5~20名と試算。ただし、米国ではフォルクスワーゲンのディーゼル車が2013年までに急増していることから、不正が始まった2008年からの7年間では計16~94名になるという。
一方、大気汚染による被害を計算するEPAのソフトウェア「BenMAP Community Edition」によれば、窒素酸化物1,300トンあたり1名が死亡していることになる。これにAPの推計した排出量を当てはめると、死者の数は7年間で12~69名になるとのこと。
The New York Timesは不正により増加した7年間の窒素酸化物排出量を46,000トンと推計し、2つのモデルを使用して死者数を試算している。発電所での窒素酸化物排出量を制限した国における死亡率の変化から試算すると死者は106名、BenMAPのデータを使用して試算すると死者はおよそ40名となる。
Fortuneは不正により増加する窒素酸化物の排出量を年間10,000~40,000トンと推計し、BenMAPのデータから死者の数を年間8~34名としている。Voxは自動車の年間平均走行距離を用い、米国で増加した窒素酸化物の量を5,800~14,200トン、全世界で86,800~212,500トンと推計。年間の死者は米国で5~27名、全世界では74~404名としている。
なお、窒素酸化物による健康被害は自動車の利用状況や人口密度、天候などにより異なる。上述の数字はあくまで推計値であることに注意したい。 スラドのコメントを読む | サイエンスセクション | 地球 | スラッシュバック | サイエンス | 医療 | 数学 | 交通
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