一尾仁司の「虎視眈々」:日本株の鈍さを考える

2015年10月9日 12:01

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記事提供元:フィスコ


*12:01JST 一尾仁司の「虎視眈々」:日本株の鈍さを考える

〇米国先導、買戻し交えた金融相場の色彩

NYダウ17000ドル(終値17050.75ドル)、WTI原油相場50ドル/バレル(一時的、終値は49.43ドル)のフシ目的な水準を回復した。米利上げ見送りにより、「利上げシナリオ」ポジションの調整に揺さぶられてきたが、調整が一巡し、緩和持続による金融相場ラリーが戻りつつあると考えられる。

米市場の重荷と見てきた三つの要素、「ドル高圧迫」、「原油安」、「中国懸念」が緩んでいることが背景と考えられる。「ドル高」・・・6月の黒田発言で対円相場が横ばい基調となり、その後ユーロ安、新興国通貨安の圧力が掛かっていたが、ユーロはVW問題でも大きくは崩れず、新興国通貨も原油反転やTPP大筋合意(マレーシアなど一部のアジア通貨)などで戻り歩調となっている。黒田発言は米国内にドル高警戒があることを示唆したが、その後の防衛攻防がようやく、安定感につながってきた。

「原油安」・・・一時はバレル20ドル台の観測も出たが、米リグ稼働基数の低下、ロシアのシリア攻勢による中東緊迫などで戻り歩調に。
「中国懸念」・・・9月下旬の米中首脳会談で、習近平主席は人民元安を招かないこと、経済の安定(株価維持を含む)を約束した。懸念が再燃するリスクはあるが、当面、懸念は薄らいでいる。

8日発表のOECD景気先行指数(8月)は、主要国の大半が鈍化。世界景気が足踏み局面にあることを示す。米国は日欧より低下度合いがやや大きかったが、それでも世界経済を牽引しているとの認識がある。金融ラリーは米国が先導すると見られる。なお、中国、ブラジル、ロシアの悪化が目立ち、仏、伊などのユーロ圏、インドなどは改善を示している。

NYダウと日経平均の絶対値差は1500~2000ポイント差で動いてきた。NYダウ17000ドルに対しては日経平均18500~19000円水準が妥当と思われるが、足元はやや出遅れ感がある。

1)需給面で、空売り比率が40%前後でなかなか低下せず、市場マインドの改善が遅れている印象。本日はオプションSQ(SQ攻防で低めの推移との思惑があった)、通過後、売り圧迫が薄らぐか注目される。

2)景況感停滞。昨日も、機械受注、景気ウォッチャー調査と不振を示す経済統計が続いた。インバウンド消費にも強弱感が出るなど、景気牽引役不在が響ている。

3)政策遅れ。秋の臨時国会召集が異例の見送りとなりそうだ。経済重視を強調しているが(その分、内容充実が問われ)、内閣改造もあって政策発動が遅れる見込み。

4)日本経済は米国より、アジアを中心に海外経済に左右されやすい点は黒田日銀総裁も認めている。中国や東南アジア経済に、もう少し安定感が戻って欲しいところ。

これら低迷要因は致命的でなく、一時的な可能性がある。相場は企業決算を投影した局面に移行すると考えられる。トップバッターの米アルミ大手アルコアは10.7%減収で利益予想を下回った。時間外で株価は一時4.3%安。実態悪には厳しい反応が予想されるが、アルコアは先日分社化計画を発表、航空、自動車、アルミナなどのビジネスは堅調で、今後の推移が注目される。日本の決算発表では、空売り残の多い企業(7日時点で1000万株以上38銘柄)が注目される。1位はシャープ(1億2014万株)、2位新生銀行(6797万株)だが、ニコン(6130万株)、ドコモ(4609万株)、板硝子(3765万株)、川崎汽船(3099万株)、キャノン(2893万株)、武田(1396万株)などが注目銘柄(本日、22%営業増益観測報道の旭硝子も3010万株残っている)。

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(10/9号)《FA》

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