安保大転換と激動、来夏までの国政・政界

2015年9月22日 22:07

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記事提供元:エコノミックニュース

国民の6割以上が「今国会での安保法案成立に反対」と国会で慎重審議をするよう求めてきた「集団的自衛権行使を限定容認する安保法案」が参院で採決され、自民・公明、次世代、元気、新党改革の賛成多数で可決、成立した

国民の6割以上が「今国会での安保法案成立に反対」と国会で慎重審議をするよう求めてきた「集団的自衛権行使を限定容認する安保法案」が参院で採決され、自民・公明、次世代、元気、新党改革の賛成多数で可決、成立した[写真拡大]

 国民の6割以上が「今国会での安保法案成立に反対」と国会で慎重審議をするよう求めてきた「集団的自衛権行使を限定容認する安保法案」が参院で採決され、自民・公明、次世代、元気、新党改革の賛成多数で可決、成立した。

 「集団的自衛権行使は憲法9条の下で行使できない」としてきた戦後歴代内閣の憲法解釈を閣議決定で変更し、安倍内閣は「大転換」を一内閣で遂行した。

 一方、国民の8割近くが法案に対する政府説明は「十分に行われていない」と答え、「中身が分かりにくい、分からない」と、今後どうなっていくのか、法を根拠とした動向を懸念する声は、成立後、むしろ広がりを見せている。

 安倍総理自身、「世論調査の結果によれば、まだまだ理解は深まっていない。粘り強く、丁寧に説明を行っていきたい」と説明の必要を認め「戦争法案とのレッテルも、結果を出していくことで、剥がしていきたい」と記者団に答えた。「国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要な法制であって、戦争を未然に防ぐ抑止力向上を図った」と強調する。

 今回の法案成立で、どこが、これまでと変わるのか。端的に(1)米軍要請に応じ、『国際警察』の役割を担う事になった。後方支援で『非戦闘地域』でなく、『現に戦闘が行われていない地域』であれば、地球上のどの地域にでも出かけることが可能になる。(2)支援物資に弾薬が加わり、後方支援で戦闘準備中の米軍戦闘機への給油活動、標的への攻撃を終え、一時帰還した戦闘機へ給油を繰り返すことができる。結果、『武力行使の一体化』の危険が高まることは否めない。そのため一体化をいかに避けるか、現場指揮官の責任も含め、これまで以上に、一体化を避ける現場判断が求められる。(3)テロ集団は米軍そのものより、後方支援の物資提供、弾薬補給、武器輸送など兵站(へいたん)活動する自衛隊を攻撃ターゲットにする可能性が高くなる。

 切迫する課題は国連平和維持(PKO)活動での「駆けつけ警護」の追加。政府は法案成立を受け、来年3月から、現在活動中の自衛隊による「南スーダンPKO活動」の任務に追加する方針だ。

 NGO(非政府組織)からの要請やPKO活動中の他国軍が攻撃を受けた時にどこまでの駆けつけ警護活動をするのか、NGOなど民間人のみを対象にするのか、住民保護などの安全確保業務まで入れ込むのか、具体的実施計画を練り上げ、最終、閣議決定することとなるが、自衛官の安全性をどう担保するのかも大きな問題となる。

 駆けつけ警護により、誤って現地一般住民を殺傷する危険はどうなのか。拘束された民間人救出のため、武器を使用し、駆けつけ警護業務として救出に当たらせるのか。

 いずれにしても、南スーダンPKO活動にこれまで従事してきた自衛官らの現場の声を十分に反映させた慎重な判断が必要だ。

 安倍総理は「法の運用により、戦争法案のレッテルを剥がしていく」と、今回の法整備が「抑止力を高めるものである」と強調しているが、抑止力以上に、今回の駆けつけ警護や後方支援活動で、紛争当事者になってしまう可能性やテロの攻撃目標にされる危険性が高くなる指摘に、その指摘はあたらないと言える「賢明な行動計画措置」を検討されたい。

 さらに、安保法案成立によって、日米新ガイドラインが実効性を伴うものになったことを国民は思い起こさねばならない。新ガイドラインは安保法案が成立しなければ実効性をもたない部分があった。

 新ガイドラインの中に「国際的な活動における協力」の項があり、その中の「海洋安全保障」部分では「日米両政府は適切な時、緊密に協力する」とある。協力の中身の例示は「海賊対処、機雷掃海、大量破壊兵器不拡散のための取り組み、テロ対策活動のための取り組み」と明示されている。この例示内容こそ、米国が国際警察としての機能の一部を日本に求めたものであること、必要な費用負担を日本が肩代わりしていくことになることを示すと解すべきだろう。

 自衛隊の海外派遣は例外なき国会の事前承認案件。政府は、国会審議が尽くされるよう、国会が正確に判断できるよう、判断材料(把握情報)の提供を、特定機密を盾にするのでなく、開示する努力をしなければならない。国民はその審議を通して、海賊対処やテロ対策、大量破壊兵器不拡散活動などへの政府行動、政府判断に対し、賛否の判断ができ、理解を深めることにもなる。

 安保法案は理解が深まったことにより、反対が広がった。しかし、政府与党として、成立させた以上、理解を得る努力を続け、総理が言う「運用で国民の懸念を払拭する」実績を重ねていく責任を継続しなければならない。

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