ハイヒールで踏んでも壊れない、柔らかくて丈夫なトランジスタを産総研が開発

2015年8月15日 20:44

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記事提供元:スラド

minet 曰く、 産総研は12日、ナノチューブ実用化研究センターが開発した、衣類のように柔らかく、伸縮、曲げ、ねじり、圧縮、衝撃といったさまざまな負荷をかけても壊れないトランジスタを発表した(プレスリリース論文アブストラクト)。

ニュースリリースによれば、

 このトランジスタは、金属や酸化物のような硬い材料を一切使用せず、単層カーボンナノチューブ(単層CNT)、ゴム、ゲルといった柔らかい炭素系材料だけで構成されるため、負荷をかけると全ての部材が一体化して変形する。

 全ての部材が一体化して変形することで、界面での応力やひずみの集中が抑制されるため、オン電流、オンオフ比などのトランジスタ特性にほとんど変化がない。

 日常生活で起こりうる負荷の中でも厳しいと考えられる、ハイヒールで踏まれるという大きな圧力に対しても壊れずに特性を維持している。

 とのことで、衣服に回路を貼り付けて洗濯するイメージや、ハイヒールで踏んづけられるイメージと、それにより特性の変化がほとんどない事が示されている。 将来は、医療用センシングシステムや介護ロボットの皮膚への応用に期待としている。

それにしてもこの見た目、透明な基板上に、いかにも電子回路然とした真っ黒いパターンが載り、フニャフニャと曲がっている様は、なかなかサイバーパンクだ。

 産総研では半導体的性質の単層CNTを選択的に分離する技術を開発してきたという。今回開発されたのはサイドゲート型トランジスタで、チャネルに半導体的性質の単層CNT、電極に伸縮性のある導電性単層CNTゴム複合材料、絶縁層にイオンゲル、基板にシリコンゴムを用いることで、衣類に近い柔軟性を実現したとのこと。

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