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越境ECの最新動向を知る アパレルウェブが無料セミナー「サロン・ド・アパレルウェブ」開催
ファッション企業のeコマースやウェブ関係者が抱えている課題解決を目的とし、ウェブ分野におけるノウハウを多く保有している企業や、先進的な取り組みを行う企業をゲストに迎える「サロン・ド・アパレルウェブ―ファッション業界のIT活用について皆で考える会」(運営:アパレルウェブ)の第2弾が6月、都内で開かれた。
第2回目となる今回は「越境EC」をテーマとし、2014年8月に日本上陸を果たしたファッションEコマースサイト、ファーフェッチ・ジャパンの和島昭裕ディレクターをゲスト講師に招聘。世界の人気セレクトショップ320店舗以上のアイテムを取り扱い、ラグジュアリー市場に攻勢をかける新ビジネスモデルで“ファッション業界の黒船”と称される同社サービスの仕組みや今後の展望について聞いた。
杉本慎太郎アパレルウェブ事業統括本部本部長は、同社がシンガポールで展開する国内ブランドセレクトショップと、その越境ECサイトであるオンラインショップの「Jrunway」の運用実績を元に、今注目されている越境ECについて解説した。
また「越境EC」をテーマにしたトークセッションには、和島、杉本両氏に加え、「JRUNWAY」の越境EC運営に携わる東幹也アセアン室室長と、ストラウス久美子AWSGディレクターも参加。参加者から事前に募集した質問に回答する形で、各市場の特性に合わせたブランド運用について説明した。
●アジア市場特有の販売・プロモーションで攻める
杉本は、日本の若年女性の人口が減少傾向を辿っているのに対し、7割以上のファッションブランドが10~20代の若年層をターゲットにしていると指摘。外資ファストファッションの相次ぐ日本進出や、為替変動(円安)といった市場の変化も加わり、日本ブランドにとっては、“これまでと同じ”手法が通用しない時代に突入していると強調。その状況を打破する方法の1つとして、グローバル展開のプラットフォームとなり得る「JRUNWAY」を2012年10月に開業したと説明した。
ネットユーザーが約2億人(日本は1億人)存在するアセアンでは、ウェブによるプロモーションがブランド認知度・売り上げ向上に不可欠であることから、SNSの活用やパワーブロガーの囲い込みといった施策を実施。2014年1月時点で、「JRUNWAY」の累計買上げ客数が10万人以上、現地での認知度が約40%に達したことなど、成果を挙げていることを報告した。
4月からスタートした越境型ECは現在、シンガポールやマレーシアなど6カ国に配送。将来的にはアセアン全域に拡大する予定。店舗販売とECを連動させたO2Oプロモーションができることが、「JRUNWAY」最大の強みであるとし、参加企業は、将来の海外展開に向けたテストマーケティングや、ブランドの販売エリア拡大、インバウンド顧客向けのプロモーション、認知度を上げるサポートといったメリットが得られると強調。参加企業とともにアジア展開を拡大していきたいと話した。
■JRUNWAY オンライストア
http://www.jrunway.com/
●世界のカレンダーに合わせたマーケティングが不可欠
和島氏は、2008年ロンドンでスタートした「ファーフェッチ」のサービス概要について説明。“自国にいながら、国内外の有力セレクトショップの高感度なアイテムが手に入るマーケットプレイス”であることを強みに、欧米を中心にサービスを拡大。現在、30カ国・320以上のセレクトショップが出店し、1,500ブランド・12万5,000点数を180カ国以上へ配送。月間アクセス数は900万ビジット、年間の購入者は50万人に達したという。
現在もグローバルに成長拡大を続けており、年間売り上げの約半数はイタリアのセレクトショップによるものだが、近年はオーストラリアやブラジル、アジアからの参加が増加。ユーザーについても、現在はアメリカが3割と首位を占めている一方、香港や韓国が急伸し、オーストラリアとブラジルはブティック数同様、大きな伸びを見せているという。
消費動向についても、同サービスならではの特徴が見られると和島氏。商品の平均客単価は700ドルと高単価を維持。また、シューズとバッグが売り上げをけん引するとされる通常のファッションECとは異なり、衣料品トップを占めており、「ファッションアディクト(=中毒的にファッションが好きな人)のためのサービス」というブランディングが確立していると分析した。
続けて和島氏は、グローバル展開において不可欠な要素について説明。プラットフォーム側に求められるものとして、①各地域の決済ルールに対応した支払い、②関税など諸費用を含めた価格設定・配送制度、③配送後のカスタマーサービスまでを含めた言語対応、④トラフィックの多さ、⑤認知度向上のためのブランディング、の5点をあげた。
日本のブランドが把握しておくべき点として、北半球と南半球で商材のピークが変わることや、日本が世界のマーケットのスケジュールから1カ月遅れている点などを指摘。世界市場に対応したマーケティングが今後の課題であり、こうした課題をクリアしていくことが売り上げに直結すると強調した。
2014年8月に日本進出を果たし、今後は香港にある拠点と併せ、アジアのマーケット拡大にも注力するというファーフェッチ。最後に和島氏は、ファーフェッチに出店することにより、海外進出のための手間やコストをかけずに販売先を広げられること、ブランドの売り上げをローカルとグローバルの両軸で捉えられること、海外との接触が増えブランド認知につながる――など同サービスの魅力を改めて説明した。
■ファーフェッチ
http://www.farfetch.com/jp/
●独自性が求められるグローバルECの新潮流
トークセッションでは、事前にヒアリングした質問に沿ってディスカッションを行った。
海外で成功している越境ECモデル-ーのテーマでは、アジア圏、ヨーロッパ圏で注目する事例を紹介した。アジア圏では、「Zalora」を、ヨーロッパ圏では「LUISAVIAROMA」「The Webster Miami」を取り上げた。和島氏は今後、「コミュニティのSNSをフックにお買い物を行う」という消費行動が起こるのではないかという。続けて、インターネットでは、「世界中どこでも同じ商品が買える」というスタンダライゼーションから、「ユニークな希少性のある商品を世界中から買える」という多様化の波になりつつあると指摘した。
次に越境ECを取り組むにあたってのプロモーション手法について、ファーストステップとして、FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアの活用が効果面でも費用面でも取り組みやすいと、ストラウスが答えた。トークセッションでは最後に質疑応答の時間を設け、聴講者からの質問も飛び交うなど越境ECに対する関心度が高いことが伺えるものであった。
※この記事はアパレルウェブより提供を受けて配信しています。
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