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グローバル化が加速する日本企業。CEO・COOの役割とは?
グローバル化が着々と進む住友理工。6月18日付で、前・代表取締役社長の西村義明氏が代表取締役会長兼CEOに、前・取締役専務執行役員の松井徹氏社長兼COOにそれぞれ就任した。[写真拡大]
近頃、日本企業のグローバル化が話題となっている。これまでの日本企業の海外進出は、海外諸国に営業所や出張所を置いたり、製造工場を建てたりする程度で、「国際化」ではあっても、地球規模で市場を考える「グローバル」なものではなかった。ところが、ここ数年、グローバル本社の設立や地域統括など、日本企業における組織的かつ包括的なグローバル戦略が目立つようになってきたのだ。
たとえば、高機能ゴムや樹脂製造を行う住友理工株式会社?5191?もそんな企業の一つだ。 同社は、自動車用防振ゴム・ホース部門で国内トップシェアを誇る企業として知られているが、海外でも現在、世界24か国102拠点で事業を展開し、グループ従業員のうち8割が日本以外の地域で業務に従事している国際的な企業だ。2014年10月に旧社名である東海ゴム工業株式会社から現在の住友理工株式会社に社名変更した前後から、これまでよりもより積極的なグローバル化を推し進めている。
今年4月、名古屋市にグローバル本社を設立すると発表して話題になったが、13年にはすでに京都府の綾部市に同社の産業用ホース事業を集約した製造子会社「TRI京都」を設立、。国内の製造拠点であると同時に、中国やインド、ロシアで展開している海外拠点のマザー工場と位置付けて、世界市場を視野に入れた事業展開を開始している。また、7月7日には東北・山形に自動車用防振ゴム製造新会社を設立すると発表し、こちらも東北・北関東エリアの需要に対応するだけでなく、世界で通用する高付加価値の製品を発信していくという。
さらに注目されるのは、今年から経営体制も大きく変更されたことだ。6月18日に行われた定時株主総会後の取締役会において、代表取締役社長・西村義明氏が代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)に、取締役専務執行役員・松井徹氏が社長兼COO(最高執行責任者)にそれぞれ就任した。CEO・COOを導入したことにより、指示系統をより明確にし、経営体制の強化を図る。
住友理工だけでなく、グローバル戦略を進める国際的な企業の中では、このCEOやCOOの制度を導入する企業が増えているが、具体的にCEOとCOOはどのように違い、この制度を導入することでどんなメリットがあるのだろうか。
CEOという言葉が日本で一般的に知られるようになったのは、やはりフランスの自動車会社ルノーの取締役会長兼CEO(PDG)にして、日産自動車?7201?の社長兼CEOであるカルロス・ゴーン氏の存在だろう。1999年当時、日産は経営と財政危機に瀕していた。そこに颯爽と登場したゴーン氏がCOOに就任し、鮮やかに経営を立て直したことから、ゴーン氏の手腕はもとより、CEOやCOOという言葉への注目も高まった。
CEOやCOOはアメリカの法人で伝われている呼称だが、役員の呼び方を単純に横文字にしただけではない。CEOはグループの最高「経営」責任者で、グループ全体の経営に対して全責任を負い、業務を遂行する。一方、COOはグループの最高「執行」責任者で、業務執行の責任を負い、陣頭指揮を執る役員のことを指す。簡単にいえば、COOはCEOの決定したことを実践していくための責任者というわけだ。
日本企業で従来使われている「社長」や「会長」という役職と決定的に違うのは、役割と責任の範疇を明確にすることで、より攻撃的な経営体制になるということだろう。会長兼CEOは決して隠居職ではなく、最前線でグループ全体を統括する経営者なのだ。
とはいえ、日本ではまだまだCEOやCOOに対する認識は高いとはいえず、従来の役職の呼称を単なる横文字に置き換えたものと勘違いしている人も多いのではないだろうか。日本企業の旧来の体制のままでは、本当の意味でのグローバル企業への転換は難しいという声も多い。確かに、役職名の呼び方を変えただけでは何も変わらないだろう。
しかし、その一方で、今回の住友理工のように段階を踏んで真のグローバル化を進める企業やグループが増えはじめているのも事実だ。CEOやCOOという役職が本来の意味で使われ、効果的な組織運営に繋がれば、日本企業のグローバル化はもっと加速するのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)
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