安保法案「衆院通過」野党相次ぎ違憲立法と非難

2015年7月17日 23:48

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記事提供元:エコノミックニュース

集団的自衛権の行使を認める政府の安保法案が16日、自民、公明などにより衆院本会議で可決。参院に送られた。

集団的自衛権の行使を認める政府の安保法案が16日、自民、公明などにより衆院本会議で可決。参院に送られた。[写真拡大]

 集団的自衛権の行使を認める政府の安保法案が16日、自民、公明などにより衆院本会議で可決。参院に送られた。民主、維新、共産、社民、生活の党は、安保法案は憲法違反、ないし憲法違反の疑いがある法案、衆院での審議も十分でないとして抗議し、採決に応じず、欠席した。

 本会議は衆院運営委員会の林幹雄委員長(自民党)が野党の反対を無視し、委員長職権で開催した。安保法案に対する賛成、反対の討論のあと、主要野党が欠席する中、採決し、可決した。政府・与党(自民。公明)が60日ルールを使ってでも今国会での成立をめざす強引な姿勢が浮き彫りになっている。

 討論では、自民党の松本純議員が政府案に賛成するとして、賛成理由に「北朝鮮のミサイル配備の伸展、核開発の継続、中国の不透明な軍備増強、国際テロの脅威の拡大など、我が国を取り巻く安全保障環境が激変している」と訴えた。

 集団的自衛権の行使は違憲ではないかとの指摘には「そのような批判はまったく当たらない。現行の憲法9条の下でも合憲」と政府を後押し。維新の案には「日米防衛協力強化の効果には不十分」などと反対。また、「国会審議では主要な論点は出尽くしている」と国民感覚から大きく外れた認識を示した。

 公明党の遠山清彦議員は「戦後、歩んできた平和国家路線は今回の(政府の)平和安全法制(安保法案)でもなんら変わるわけではない」と訴え、賛成討論。

 遠山議員は「国際社会の平和あってこその日本の平和」といい、集団的自衛権行使においても「自国防衛に限定したもので、昭和47年の政府見解の基本的論理の枠内にあることは明らか」と違憲でないと強く主張した。

 一方、民主党の岡田克也代表は「国民の8割が政府の説明は不十分といい、半数以上が政府の安保法案は憲法違反、あるいは安保法案に反対と答えている。平和を求めて国会を取り巻く若者たちは日に日に増えている」と現況を語ったうえで、政府案に反対する討論を行った。

 岡田代表は「大多数の憲法学者、歴代内閣法制局長官、自民党の元議員までが、政府案は違憲、あるいは違憲の疑いが強いと断じている。この状況で強行採決することは戦後の民主主義にとって大きな汚点になる」と採決取りやめと政府案撤回を求めた。

 岡田代表は「政府案には、前提になっている昨年7月1日の閣議決定そのものに問題がある」と集団的自衛権の行使を容認した憲法解釈の問題を取り上げた。

 岡田代表は安倍政権が行ったことは「本来、国民の過半数の賛成を得て、憲法改正すべきものだ」と指摘。そして「国会での議論も、国民の理解もなく、戦後70年間、歴代内閣と国会で積み上げてきた憲法解釈を一内閣の独断で変更してしまったことは大きな間違いだ」と提起した。

 また、「米国議会で、安倍総理が(安保法案をこの夏までに成就させると)約束してくるなど、前代未聞。国民無視、国会軽視だ」と訴えた。また、10本の法案を1本に束ねて提出したことにも「そもそも安倍総理には法案を本気で議論する気はない」と厳しく追及した。

 そのうえで岡田代表は「政府の新3要件は便宜的、意図的なもので、立憲主義に反する。また、昭和47年当時の政府の論理とは真逆で、もはや専守防衛とは言えない」とし、「存立危機事態の定義すら、まったく整理されていない」と問題をあげて反対した。

 維新の党の松野頼久代表は「維新案は7月8日に提出し、衆院安保特別委員会で政府案と審議を並行して行われてきたが、維新案が審議された時間はせいぜい6時間あまりしかない」と批判。また「自民・公明との協議もまだ終わっていない」ことや、「安倍総理、石破地方創生担当大臣、塩崎恭久厚生労働大臣も認める通り、政府案への国民の理解は得られていない。そんな中で、強行採決したことは言語道断の暴挙」と非難した。

 松野代表は「(政府・与党が)審議を続ければ続けるほど、国民の支持が離れることを恐れたのだ」としたうえで、強行採決したことに『厳重に抗議する』と冒頭に訴えた。

 そのうえで、松野代表は「戦後の平和国家としての歩みが、今、根本的に変えられようとしている」と訴え、「政府案の存立危機事態の文言には『我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態』とある。この意味はいったい何なのか。全く意味不明」と問題視。

 松野代表は「政府答弁によると、石油途絶に伴う事態も、天然ガスやウランの途絶に伴う事態も、サイバー攻撃で米国社会が混乱して日本に危機が及ぶ事態も含まれる。日本に武力攻撃の危険が当面ない事態までが含まれうるということだ。文言があいまいなため、歯止めが実質的にないのも同然」とし、問題点を諸々あげたうえで、「時の政権の恣意的判断で武力行使が可能になることが明らかになった」と反対した。

 日本共産党の志位和夫委員長は「政府が提案した戦争法案に断固として反対する」と冒頭に述べ、「どんな世論調査でも、国民の5割以上の人が政府の安保法案を憲法違反と批判。6割以上が今国会での成立に反対、8割以上が政府の説明は十分でないとしている」と訴えた。

 志位委員長は「こんな状態で強行採決するなど、政府与党の横暴は憲法9条の蹂躙というだけでなく、国民多数の意思をないがしろにする点で、国民主権の大原則を蹂躙する歴史的暴挙」と非難。「政府法案は海外で戦争する国に道を開く最悪の違憲立法」と反対した。

 また志位委員長は「自衛隊が兵站をすれば、相手からは(兵站している場所は)戦場の場になる。殺し、殺される戦闘に道を開くもので断じて許されない」と強く反対した。(編集担当:森高龍二)

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