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派遣法で浮き彫り、安倍政権が目指す世界
労働界がこぞって反対する労働者派遣法改正案が19日、衆議院本会議で自民・公明の賛成で可決した。[写真拡大]
労働界がこぞって反対する労働者派遣法改正案が19日、衆議院本会議で自民・公明の賛成で可決した。安倍政権は日本経済団体連合会など経営側が望む労働規制の岩盤に大きな穴ではなく「これから大きくなる穴をあけた」。法案は参議院に移り、国会の会期延長の中で成立の見通し。9月1日に施行の予定。
成立すれば、企業の派遣労働者受け入れ期間に制限がなくなる。連合は「企業にとって『安くて使い勝手のよい派遣労働』を一層拡大させようとするもので、我が国の雇用の在り方に重大な影響を及ぼす改悪法案と言わざるを得ない」と強い懸念を示す。
「労働者派遣制度の2つの世界標準の考え方になっている『派遣は臨時的・一時的業務に限ること』及び『均等待遇』の両方を満たしていない」と指摘。「低処遇を放置したまま常態的な間接雇用法制を実質的に導入するもの」と問題の本質を突く。
これこそ、労働法制の岩盤規制を打ち崩し、世界で最も企業が活動しやすい国づくりへ安倍政権が目指す大きな一歩と認識しなければならない。
民主党の枝野幸男幹事長は「現在派遣で働いている皆さん、これから社会に出て働くに当たって正社員の椅子が減って不本意ながら派遣で働かざるを得なくなる皆さんなど、当事者にとって本当にとんでもない法案だ」と労働界に深刻な影響をもたらすことになる法案であることを指摘。「日本の社会と経済をぶちこわす法案だ」と厳しく非難する。
今回の法案で安倍政権が目指す世界が浮き彫りになった。「経済至上主義」と「国際競争力を強化するためのコスト低減」だ。
その最たるものが人件費であることは誰の目にも明らか。年収1075万円以上の収入があるサラリーマンには完全成果主義を取り入れ、残業代ゼロにしようという仕組みづくりも、根底にある発想は同じだろう。法律として通し、収入適用額を省令で引き下げれば対象労働者をどんどん増やせる。労働者はその危険性を排除する担保を取り付けねばならない。つまり、こうした法案では額も法律で定めることが必要だ。
民主党の阿部知子衆議院議員は派遣労働者について、平均賃金が年々下がっていること、年収300万円以下が7割に上ること、現在の生活を7割の人が苦しいと答えていることを取り上げ「これをさらに悪化させるようなことをすべきではない。すべきは派遣労働が適正に運営管理され、その意味がどこにあるかをもう一度位置付け直すこと。改正は派遣労働の方向性を誤らせる」と警告する。
国会審議の舞台は参議院に移った。労働者は自身を守るうえでも、法案をチェックし、審議に耳を傾けることが必要。労働者派遣法改正の影響は正社員の待遇にも将来、大きな影響を与えることになる。
政府・与党は、国外に向けては「安保法制」、国内においては「労働法制」の見直しを会期延長でやり遂げる狙い。筆者には両法制ともに、国民の声にではなく、アメリカの声、経営者の声にこたえるための見直しに映る。
国民のために行う見直しというのなら、両法案ともに、国会をまたいで、納得できる説明を行って頂きたい。安倍総理の国会答弁はすでに安保法制では破綻している。労働法制では弱者(雇われる側)の立ち位置に見えない。「派遣労働者の正社員への道を広げる。スキルアップにつながる」との答弁に説得力を欠くのは、そのためかもしれないが、国民の懸念を払拭するだけの担保を是非、延長国会の中で示して頂きたい。示せなければ、次の国会で仕切り直しをする。労働、安保で状況を一変させる法制だ。真摯な姿勢が求められる。(編集担当:森高龍二)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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