理研、バセドウ病の発症に関わるHLA遺伝子配列を同定

2015年6月9日 15:56

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ビッグデータ解析によるHLA遺伝子配列構造の可視化。理化学研究所の発表資料より。

ビッグデータ解析によるHLA遺伝子配列構造の可視化。理化学研究所の発表資料より。[写真拡大]

 理化学研究所の岡田随象客員研究員らの共同研究グループは、移植や免疫反応に関わるHLA遺伝子の個人差をコンピューター上で高精度かつ網羅的に解析する「HLA imputation法」を、日本人集団に適用するためのデータベースを開発し、「HLA imputation法」を大規模ゲノムワイド関連解析(GWAS)へ適用することで、日本人のバセドウ病の発症に関わるHLA遺伝子配列を同定した。

 移植や免疫反応に関わるHLA遺伝子は、免疫関連疾患、感染症、精神疾患、悪性腫瘍といった多彩な疾患の発症リスクを持つことが知られているが、HLA遺伝子配列の構造は複雑で、遺伝子配列決定に高いコストを要するため、解明が進んでいなかった。

 今回の研究では、日本人集団900名を対象に、HLA遺伝子配列や周辺の一塩基多型(SNP)を含む主要な遺伝子配列のジェノタイプデータを網羅的に取得し、HLA imputation法に必要な学習用参照データを作成した。そして、このデータを用いてHLA遺伝子配列構造の解明を試みたところ、複数のHLA遺伝子における特定の遺伝子配列の組み合わせで構成されるHLA遺伝子ハプロタイプが高い頻度で存在することが判明した。

 また、日本人集団9,000人で構成されたバセドウ病の大規模GWASデータに対してHLA imputation法を適用したところ、複数のHLA遺伝子(HLA-A、HLA-B、HLA-DRB1、HLA-DPB1)のアミノ酸配列の個人差によってバセドウ病の発症リスクが規定されていることが明らかになった。

 今後は、作成した学習用の参照データを用いて日本人集団における他の疾患に対してHLA imputation法を適用することで、更なる疾患バイオマーカーの同定や疾患病態の解明、個別化医療の実現に繋がるものと期待されている。

 なお、この内容は「Nature Genetics」に掲載された。論文タイトルは、「Construction of a population-specific HLA imputation reference panel and its application to Graves’ disease risk in Japanese」。

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