京大、クモの糸より細いガラス糸を用いて光を効率良く吸い取るナノデバイスを開発

2015年5月21日 15:32

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今回の研究で実現した微小共振器内蔵のナノ光ファイバ。a.模式図 b.作成したデバイスの、走査イオン像(SIM)。白い線は、1μm(千分の1mm)。ナノ光ファイバの直径は270nm(京都大学の発表資料より)

今回の研究で実現した微小共振器内蔵のナノ光ファイバ。a.模式図 b.作成したデバイスの、走査イオン像(SIM)。白い線は、1μm(千分の1mm)。ナノ光ファイバの直径は270nm(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学の竹内繁樹教授らは、光ファイバの一部を直径300nm(クモの糸の10分の1の細さ)の細さにまで引き延ばしたナノ光ファイバに光の共振器構造を組み込んだデバイスを実現し、このデバイスを用いて、単一発光体からの光を高効率で光ファイバに結合できることを実証した。量子暗号通信や光量子コンピュータへの応用が期待されるという。

 量子暗号通信や、既存のコンピュータでは解けない問題を解く量子コンピュータの実現に向け た研究が進められており、その鍵となるのが、光子を制御するためのデバイスである。特に、人工原子などの単一発光体から発生した光子を、光子の通路である単一モード光ファイバへと結合することは非常に重要な課題となっていた。

 今回の研究では、直径270nmのナノ光ファイバに、集束イオンビームを用いて周期的な溝(深さ 45nm、周期300nm)を彫り込むことで、微小光共振器を組み込んだナノ光ファイバの実現に成功し、この光共振器内蔵ナノ光ファイバにくわえる張力を調整することで、可視広域で20nm以上と、光共振器の共鳴波長を大きく変化できることを見出した。

 さらに、この光共振器内蔵ナノ光ファイバの共振器部分に単一発光体として量子ドットを付着させ、その発光スペクトルを観察したところ、共振器の共鳴波長において、発光強度が2.7倍に増強した鋭いピークが見られた。

 研究メンバーは、「分子や量子ドットなどの単一発光体からの光子を、大型の顕微鏡等を一切使わずに、より高い効率で光ファイバへ導くことが可能になり、検査装置等の超小型化、低コスト化などにも貢献できるのではないかと思っています」とコメントしている。

 なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。論文タイトルは、「Highly Efficient Coupling of Nanolight Emitters to a Ultra-Wide Tunable Nanofibre Cavity」。

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