東大など、薬による不整脈の発生リスクを予測するシステムを開発

2015年5月8日 11:09

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不整脈リスク予測システムの概要を示す図。(左列)薬剤のイオンチャネルへの影響を細胞を用いた実験で測定する。(右列)細胞実験の結果に基づいてある量の薬剤を投与した場合の心臓の反応を心臓シミュレータ(UT-Heart)で再現し不整脈が起きるかどうかを判定する。(東京大学などの発表資料より)

不整脈リスク予測システムの概要を示す図。(左列)薬剤のイオンチャネルへの影響を細胞を用いた実験で測定する。(右列)細胞実験の結果に基づいてある量の薬剤を投与した場合の心臓の反応を心臓シミュレータ(UT-Heart)で再現し不整脈が起きるかどうかを判定する。(東京大学などの発表資料より) [写真拡大]

 東京大学の岡田純一特任講師らの共同研究グループは、分子機能に基づく心臓のコンピュータモデルUT-Heartを使用して、薬による不整脈の発生リスクを正確に予測するシステムを世界で初めて開発した。

 薬による致死性の不整脈は胃腸薬、抗生物質を始めあらゆる薬で起こり得る。現行の細胞実験、動物実験を主体とした方法は実際のヒトでの不整脈発生を観察している訳ではないため、その精度に疑問が持たれていた。

 本研究では、既に市販されたものを含め不整脈のリスクの分かっている12種類の薬剤について、6種類のイオンチャネル電流への機能抑制効果を測定した。そして、この結果に基づいて、薬の投与量を変えた場合の細胞および心臓の状態をシミュレーションで再現し、さらに胸部モデル上で心電図を観察した。その結果、薬の量を常用量から増加していったところ、リスクが高いとされる薬では常用量をわずかに越える量から不整脈が発生したが、安全とされる薬では常用量の何十倍に相当する量に至るまで不整脈は発生せず、危険な薬はもれなく検出しながら偽陽性なしとの結果が得らた。

 今回の調査は12種類の薬に留まったが、今後更に多くの薬について検証を行った後に、実際の新薬開発に応用される予定という。研究グループは、今回のシステムによって新薬の開発が画期的に加速されることが期待されるとしている。

 なお、この内容は「Science Advances」に掲載された。論文タイトルは、「Screening system for drug-induced arrhythmogenic risk combining a patch clamp and heart simulator」。

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