高齢者水頭症に対して、脳を傷つけない治療法「L-Pシャント術」の有用性が明らかに

2015年5月6日 21:05

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 東北大学の森悦朗教授らのグループは、高齢者水頭症(特発性正常圧水頭症)に対して、「L-Pシャント術」と呼ばれる脳を傷つけずに実施できる治療法が有効であることを多施設共同臨床試験で実証した。

 水頭症とは、頭の中に存在する体液(脳脊髄液)が何らかの原因で吸収が悪くなり、過剰な脳脊髄液が頭の中に溜まることで脳を圧迫してしまうために症状が出てくる病気である。さらに高齢者において、先行する疾患が無くゆっくりと徐々に進行するものを、特発性正常圧水頭症(iNPH)と呼んでいる。

 今回の研究では、2010年3月から2012年12月まで全国20施設で、iNPHに対する腰部くも膜下腔腹腔脳脊髄液短絡術(L-Pシャント術)の有用性を調べた。93名のiNPH患者を、すぐにL-Pシャント術を受ける群(早期群49名)と、プログラムに沿った体操をしながら3カ月間手術を待った後にL-Pシャント術を受ける群(待機群44名)に分け、症状の変化を比較した。その結果、日常生活活動の自立度に改善を認めた患者の割合は、早期群で49名中32名(65%)、待機群で44名中2名(5%)となった。さらに、シャント術後12カ月間の改善についても両群間で比較したところ、ほとんど差がなくなり、以前行われた研究で示されたV-Pシャント術の効果と同等であることが分かった。

 この研究成果は、脳を傷つけない治療法であるL-Pシャント術の有用性を世界で初めて明確にした重要な報告であると言える。

 なお、この内容は「Lancet Neurology」に掲載された。論文タイトルは、「Lumboperitoneal shunt surgery for idiopathic normal pressure hydrocephalus(SINPHONI-2):an open-label randomised trial(特発性正常圧水頭症に対する腰椎-腹腔シャント手術(SINPHONI-2):非盲検無作為化試験)」。

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