横浜市大など、立体的な臓器の芽を人工的に作製する培養手法を確立

2015年4月21日 22:46

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今回の研究の概要を示す図(横浜市立大学などの発表資料より)

今回の研究の概要を示す図(横浜市立大学などの発表資料より)[写真拡大]

  • 今回の研究ではさまざまな器官原基創出への応用に成功した。(横浜市立大学などの発表資料より)
  • 今回の研究では機能的な腎組織の形成が確認された。(横浜市立大学などの発表資料より)

 横浜市立大学の武部貴則准教授らの共同研究グループは、立体的な器官原基(臓器の芽)を人為的に創出する汎用的な培養手法を確立した。

 iPS細胞等の幹細胞を用いた再生医療の実現を目指す上では、立体的な複雑構造を再現することが必要であり、多種多様な細胞間相互作用を実現する革新的な3次元培養系が待望されていた。

 今回の研究では、「臓器の芽」の形成過程で連続的に取得した画像データの解析を行った結果、3種類の細胞が力学的に収縮することにより立体組織形成が誘発されていることが分かった。そこで、このような収縮現象を引き起こすために重要な細胞の種類を特定するべく、様々な細胞種の組み合わせで共培養実験を行ったところ、間葉系幹細胞の存在が器官原基の自律的形成に必須であることを見出すことに成功した。

 さらに臓器の芽の形成を誘発するためには、硬さに関する最適条件が存在することも判明した。実際に、間葉系幹細胞の存在とその外部環境を適切に調製した条件下において、さまざまな器官原基形成の誘発が可能であるか実験したところ、マウス胎児等より分離した細胞を、ヒト間葉系幹細胞と共培養することで、肝臓のみならず、膵臓、腎臓、腸、肺、心臓、脳などさまざまな器官の3次元的な原基を創出することに成功した。

 今後は、本研究成果が、さまざまな器官の再生医療を目指す上での画期的な技術基盤となるだけでなく、新たな医薬品開発のツールとして応用できると期待されている。

 なお、この内容は「Cell Stem Cell」に掲載された。論文タイトルは、「Vascularized and Complex Organ Buds from Diverse Tissues via Mesenchymal Cell-Driven Condensation」。

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