日経平均2万円達成に関するメディアの報道は間違いだらけ

2015年4月13日 07:59

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記事提供元:フィスコ


*07:59JST 日経平均2万円達成に関するメディアの報道は間違いだらけ
先週、日経平均は取引時間中に一時約15年ぶりとなる20,000円台をつけた。15年ぶりの2万円台回復ということでメディアは様々な報道を行っている。
 そのなかで多く目につくのが、「多くの国民には景気回復の実感がないのに株価だけが上がっている」、「一般庶民には恩恵がない」、「中小企業には関係がない話だ」、「緩和マネーによるバブルだ」といったトーンの報道だ。
 確かに、世界中の株価が世界各国の金融緩和策により押し上げられている面は否定できない。公的資金や日銀の買いが相場を支えている面もある。
 しかし、企業の業績は民主党政権時代よりも明らかに大幅に改善しており、バブル期の最高益を更新する企業も出てきている。株価は企業の業績が上がれば庶民の実感とは関係なく上がるし、株価は実感するよりも先に将来を織り込んで動く。また、株価が上昇することにより株を運用する年金基金や生保等の収益が増え、国民への年金や保険料の支払いが増えることから直接株式を保有していない国民も広く利益を享受することになる。2012・2013年度の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用益は2年連続で10兆円を超えており、国民が得る株高の恩恵は非常に大きい(消費税増税による税収増約5兆円の2倍にも達する)。さらに、株高による資産効果により実体経済自体も好転する効果もある。株式市場に資金が多く集まれば、新しい企業の資金調達も容易になり新しい産業の育成にもつながる。
 バブル崩壊以降、株価が少し上がるとメディアの報道は「すわバブルか」とか、上記のようなネガティブなトーンが多く見受けられるが、株高は基本的には良いことのほうが多く、個人や実体経済へも好影響があることを忘れてはならない。国民のみならず、メディア側にもデフレマインドが残っているきらいがある。
 実感ベースやエモーショナルな報道ではなく、企業業績やITバブル期より明らかに低い株価収益率(PER)、改善し続ける株主資本利益率(ROE)等についても冷静に分析した報道が望まれる。  一方、「日経平均株価」で大騒ぎするのも全く正しくない。日経平均株価は、ファーストリテイリング<9983>、ソフトバンク<9984>、ファナック<6954>の寄与度上位3社の銘柄が、影響力(寄与度)のほぼ四分の一を占める等、一般に思われている以上に偏りの大きな指数だ。先週金曜日の日経平均2万円台も、前日に発表されたファーストリテイリング(ユニクロ)の好決算の発表がなかった実現しなかった。
 日経平均は15年ぶり高値をつけたが、東証全体の株価指数「TOPIX」はまだリーマン・ショック前高値すら抜けていない。TOPIXも時価総額が大きい銘柄の影響が大きいが、個別株ではリーマン・ショック後の低迷からそれほど上がっていないものも多く、日経平均2万円を片目で見つつ首をかしげている個人投資家も多いはずである。
 TV局によっては、「日経平均株価」を単に「平均株価」との呼称で報道しているところもあるが、大きな間違いである。
 「日経平均株価」は必ずしも日本株の状況を正確に表象するものではない。もし、バブルというのであれば「日経平均バブル」と言うのが正しい。
 株価に関するメディアの報道にはミスリーディングかつエモーショナルなものが多いが(「バブルだ」・「バブル崩壊だ」あるいは、「暴落する」・「暴騰する」等)、個人投資家はこれらに踊らされず、自分なりに冷静な分析・判断を行うべきだ。《YU》

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