AKB46でホームラン王? 今、企業に求められる遊びゴコロとは

2015年4月11日 19:53

印刷

記事提供元:エコノミックニュース

 近ごろ、企業間での異業種コラボレーションや異業種参入が盛んに行われ、これまでに無かった新しい技術や製品が続々と生み出されている。

 例えば昨年、東レ<3402>とNTT<9432>は共同で、ナノファイバー生地に高導電性樹脂を特殊コーティングし、着用するだけで生体情報の連続計測を可能とする画期的な機能素材「hitoe」の実用化に成功している。また、東海ゴム工業‹5191›は九州大学、九州大学病院と産学共同で研究を行い、センサーで体圧情報を感知して気泡緩衝材を自律的に調整し、体圧を分散させて床ずれを防止するマットレスを開発するなど、異業種コラボの功績は枚挙にいとまがない。

 異業種コラボのメリットは新製品の開発だけでなく、新規市場の開拓がある。停滞した市場の打破、新規分野を開拓することで企業の将来を担う事業を創出するとともに、ライバル企業との差別化も図れる。また、異業種とコラボレーションすることにより、お互いのノウハウや開発部分をアウトソースすることができるので経費の削減にもつながる。企業がこぞって異業種コラボを進めるのも納得がいく。

 その一方で、他社とのコラボではなく、自社内で新しい道を模索する企業もある。二輪車やマリンボートなどの販売が好調なヤマハ発動機<7272>も、そんな企業の一つだ。同社の自動車用エンジン事業を担当するAM事業部では毎月、AKB48ならぬAKB46という定例集会が行われているという。

 これはもちろん、社内アイドルグループの名称ではない。AKB46とは、「A(AM事業部)」「K(考える)」「B(文化活動)」「46(四六時中)」の略だそうで、要するにアイデアの発表会だ。しかし、そのアイデアは、AM事業部の課題やヤマハの事業に直結するものだけにとどまらず、既存の事業と接点のない業界のものや、サービス全般に関するアイデアなども数多く含まれているという。

 AM第1技術部の藤田氏は、同社広報誌のインタビューの中で「革新的なエンジンを生み出そうとしたときに、今までのようにエンジンという枠組みの中だけで考えていたら、驚くような新しいモノはもう生まれてこないんじゃないかと思うんです。だからこそ、エンジンと医学を組み合わせてみる、エンジンと化学を掛け合わせてみるというような発想が大切だと考えているんです」と答えている。そして、その多様な発想力を生かし、彼は、横方向への移動もスムーズに行える四輪駆動の台車や、自動で風を送ることで旗がきれいにはためく掲揚柱など、数多くの画期的なアイデアを生み出している。

 ちなみに、AKB46では発表がすべて終わった後、挙手による投票を行って「本日のホームラン」を決定しているが、藤田氏は昨年3本のホームランを打ち、アイデアの「ホームラン王」にも輝いたという。そんな藤田氏は「ものづくりに向き合う者は、モノでみんなを驚かせたいという気持ちを持っているべき」と語る。

 異業種コラボにしても異業種参入にしても、新境地を開拓しようとするときに必要なのは、効率や利益の追求だけでなく、仕事を楽しむ「遊びゴコロ」なのかも知れない。(編集担当:松田渡)

■関連記事
アクティブシニア世代のスマホ所有率の増加とそのニーズとは
日本の省エネを縁の下で支える「トップランナー」とは
2015年夏のボーナス「37万7220円」、3年連続で増加見込み
スバルのモータースポーツ統括会社「STI」が本格的に北米市場を目指す
下水汚泥という“都市型バイオマス”から水素をつくる、夢の循環型エネルギー

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

関連記事