マウスの古い記憶を人為的に連合させ、新しい記憶を作り出すことに成功―富山大

2015年4月4日 20:34

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今回の研究の概要を示す図。扁桃体BLAと海馬CA1にChR2-EYFPあるいはEYFPが導入されたc-fos::tTA遺伝子改変マウスにアン・ペアのCPFE課題を与えた。その学習時にOFF DOXとして、活動した神経細胞(緑、赤、黄色)のみをChR2-EYFPあるいはEYFPで標識した。翌日マウスがホームケージでくつろいでいるときに、レーザー照射でそれらの神経細胞群を同期活動させた。記憶テストでは、ChR2-EYFPが導入され、CA1とBLA共にレーザー照射を受け、かつテストで丸い箱に入れられたマウスだけが高い恐怖反応を示した(富山大学の発表資料より)

今回の研究の概要を示す図。扁桃体BLAと海馬CA1にChR2-EYFPあるいはEYFPが導入されたc-fos::tTA遺伝子改変マウスにアン・ペアのCPFE課題を与えた。その学習時にOFF DOXとして、活動した神経細胞(緑、赤、黄色)のみをChR2-EYFPあるいはEYFPで標識した。翌日マウスがホームケージでくつろいでいるときに、レーザー照射でそれらの神経細胞群を同期活動させた。記憶テストでは、ChR2-EYFPが導入され、CA1とBLA共にレーザー照射を受け、かつテストで丸い箱に入れられたマウスだけが高い恐怖反応を示した(富山大学の発表資料より)[写真拡大]

 富山大学の井ノ口馨教授らによる研究グループは、マウスを使って異なる2つの記憶から新しい記憶を人工的に作り出すことに成功した。

 記憶は、経験時に活動した特定の神経細胞集団として符号化され、その神経細胞集団が再び活動するとその記憶が想起される。また、既に記憶として蓄えられている複数の記憶が連合することで新しい意味を持った記憶が形成されるが、そのメカニズムは不明であった。

 今回の研究では、マウスを用いた実験で、四角い箱に入れられてすぐ電気ショックを受け直ちに取り出されると、装置と恐怖体験を関連づけることができないが、いったん装置に入れてその場所の記憶を形成させておき、その後に電気ショックを体験させると、装置と恐怖を連合して記憶し、四角い箱で高い恐怖反応を示すことが分かった。このマウスを丸い箱に入れても低い恐怖反応しか示さなかった。

 次に、2つの独立した記憶を人為的に連合できるか否かを調べるために、電気ショックや丸い箱に入れたときに活動する海馬と扁桃体の神経細胞集団にチャネルロドプシン2を導入し、海馬と扁桃体に刺入した光ファイバーを通じてチャネルロドプシン発現細胞を活動させた。その結果、このマウスは丸い箱に入れても強い恐怖反応を示すようになった。これによって、独立した記憶を人為的に連合させることができることが示された。

 結びついていない過去の記憶同士を何らかのきっかけで関連づけて体系立ったものに進化させていくのはヒトの脳機能にとって非常に重要である。記憶が連合するメカニズムに関する今回の研究は、こうしたヒトの高次脳機能の解明につながる成果といえる。また、関連性の弱い記憶同士の不必要な結びつきは、さまざまな精神疾患に関わっていることから、独立した2つの記憶の連合に関する今回の成果は精神疾患の治療法創出につながる可能性があるという。

 なお、この内容は「Cell Reports」オンライン速報版に掲載された。

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