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東大が新しいエボラワクチンの開発に成功 有効性をサルで実証
世界保健機関(WHO)の報告によれば、西アフリカ諸国で流行しているエボラ出血熱によって、感染者数が2万4,000人以上、犠牲者数は1万194人にのぼっているという。しかし、未だにエボラウイルスに有効なワクチンの開発には至っておらず、現在、臨床試験が行われている 3 種類のエボラウイルスワクチンにもその効果や安全性の問題が懸念されている。そのため、新しいエボラウイルスワクチンを開発してエボラ出血熱の予防および治療方法を確立することは最重要課題となっている。
東京大学医科学研究所の河岡義裕教授らの研究グループは30日、新しいエボラウイルスワクチンを開発し、霊長類において、新ワクチンが有効であることを示したと発表した。
これまでに河岡教授らの研究グループは、エボラウイルスの増殖に必須の遺伝子 VP30 を欠損した変異エボラウイルス(以後、“エボラ ΔVP30 ウイルス”と呼ぶ)を、人工的に作製していた。
このエボラ ΔVP30 ウイルスは、通常の細胞では増えないが、VP30蛋白質を発現する人工細胞で効率良く増殖することができる。このため、エボラ ΔVP30 ウイルスは、特定の人工細胞でしか増えられないため安全であり、現在臨床試験が行われている他のエボラワクチンと異なり、エボラ ΔVP30 ウイルスは、エボラウイルスを構成するほぼ全てのウイルス蛋白質を有するため、より高いワクチン効果が期待されるという。
研究グループは、エボラ ΔVP30 ウイルスのワクチンとしての効果を調べるために、1000万個のエボラ ΔVP30 ウイルスをサルに筋肉内接種し、4 週間後に、致死量のエボラウイルスを感染させた。エボラ ΔVP30 ウイルスを接種していないサルが全て死亡したのに対して、エボラ ΔVP30 ウイルスを接種したサルは生き残った。これは、エボラ ΔVP30 ウイルスの接種によって、エボラウイルスに対する免疫がつくことを示すものだという。
エボラ ΔVP30 ウイルスをワクチンとして使用し、人に接種することを想定する場合、安全性に配慮して、生きているウイルスの毒性を弱めた生ワクチンではなく、その毒性を取り除いた不活化ワクチンであることが望まれる。より安全なエボラウイルスワクチンを開発するため、研究グループは、エボラ ΔVP30 ウイルスの不活化の方法について、①ガンマ線を用いた方法と、②過酸化水素水を用いた方法を検討し、エボラ ΔVP30 ウイルスのワクチン効果の評価試験を行った。
その結果、不活化したエボラ ΔVP30 ウイルスのワクチンを2回接種したサルに、致死量の野生型エボラウイルスを感染させたところ、ワクチン接種をしなかったグループのサルとガンマ線で不活化したエボラウイルスのワクチンを接種したグループのサルは全て死亡した。それに対して、過酸化水素水で不活化したエボラ ΔVP30 ウイルスのワクチンを 2 回接種したグループのサルは全て生き残り、またエボラ出血熱の臨床症状も示さなかったという。
これらの結果から、過酸化水素水で不活化したエボラ ΔVP30 ウイルスを免疫したサルは、エボラウイルス感染を防御することが判明した。この研究結果によって、過酸化水素水で不活化したエボラ ΔVP30 ウイルスは、安全性が高く、効果的な新規エボラワクチンとして有望であることが示された。新ワクチンによって、現在臨床試験が行われている3種類のエボラワクチンの問題点が解決できる可能性が高く、エボラ制圧に向けて大きな一歩となることが期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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