東大、アインシュタインが提唱した「光子の非局所性」を厳密に検証

2015年3月25日 13:13

印刷

単一光子の非局所性の概念を示す図(東京大学の発表資料より)

単一光子の非局所性の概念を示す図(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

  • 今回行われた光子の非局所性検証の実験概念を示す図(東京大学の発表資料より)
  • 今回行った光子の非局所性検証実験の結果を示す図。(上)Bobがホモダイン測定を用いて推定した量子状態。Aliceの測定によらないBobの量子状態には、位相依存性がない。これは、部分反射ミラーで光子が確率的に反射されてBobに届いたり届かなかったりする点で、光子が粒子的に振舞うからである。これに対し、Aliceの観測位相と結果に対応する量子状態には位相依存性が現れる。これは、光子が波として空間的にAliceとBobの間に広がって存在し、波動的に振舞うからである。(下)EPR-steering不等式の理論値と実験値。測定された相関(マゼンタ色)が、局所相関(青色)を上回れることが、非局所性が存在することの厳密な根拠となる。部分反射ミラーの反射率は8%, 38%, 50%, 90%の4つの値を用い、再現性を確認するため各反射率に対して4回検証を行った。反射率が8%, 38%, 50%のとき、すなわち測定を行っているAlice側により多くの光子が分配されるときに非局所性が検証しやすくなる。(理化学研究所の発表資料より)

 東京大学の古澤明教授・不破麻理亜大学院生らによる研究グループは、アインシュタインが提唱した「ピンホールで回折した単一光子は空間的に広がるが、異なる2点で同時に観測されない『量子(光子)の非局所性』」を世界で初めて厳密に検証することに成功した。

 アインシュタインは、「ピンホールで回折して空間的に均等に広がった光子が、スクリーン上の1点のみでしか検出されない現実があるのは、ある1点で光子が観測された瞬間、その他の点での同時観測を妨げるような遠隔相互作用が存在しなければいけない」と考えた。これは、「光子の非局所性」と呼ばれており、非常に多くの物理学者が論争を繰り広げてきた。

 今回の研究では、生成した光子をピンホールで回折させる代わりに、入射する光の一部を反射して2つの光路に分けることで光子の経路数2つに限定し、反射光と透過光の両方をホモダイン測定した。その結果、「部分反射ミラーの片側(透過光)のホモダイン測定の観測属性(位相)を変更すると、観測属性と得られた結果(振幅の符号)に応じてもう片側(反射光)の量子状態に変化が生じる」ことが確認できた。これは「空間的に離れた2地点の片方の観測属性と結果に応じた影響がもう片方に及んで、それに対応する量子状態が現れた」ことを意味している。

 今後は、本研究の手法を活用して、光子の粒子性と波動性の両方を用いた新しいタイプの量子暗号や量子コンピューターの開発に取り組んでいくことが期待されている。

 なお、この内容は3月24日に「Nature Communications」オンライン版に掲載された。

関連記事