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「忍耐強く」を削除しても忍耐強く行くイエレンFRB議長
*08:03JST 「忍耐強く」を削除しても忍耐強く行くイエレンFRB議長
先週公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文では、利上げを急がない方針を示す「忍耐強く(patient)」の文言が大方の予想どおり削除された。
しかし、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は、「忍耐強くの文言を削除することは忍耐強くならないことを意味するものではない」「文言の削除は6月の利上げ実施を必ずしも意味しない」と述べ、FOMCメンバーの成長率見通しや金利見通しも下方修正された。
2月の失業率の低下や非農業部門雇用者数の増加はサプライズとなり、早期利上げ観測が高まったが、よく見ると労働参加率は低く、平均時給も期待ほど上がっていなかった。また、その後の各種経済指標も予想を下回るものが多かった。
イエレンFRB議長の発言や、FOMCメンバーはこれを受けて、改めて利上げには極めて慎重な姿勢を示した格好となった。米国経済は基本的に堅調だが、拙速な利上げにより経済が失速することや、金融市場に悪影響が及ぶことに対して多大な配慮をしている。
今回、多大な配慮を示すことにより、市場に衝撃を与えず「忍耐強く」の文言をはずことに成功し、一応経済指標次第というフリーハンドを得た。
しかし、今回の内実は金融緩和を行ったに近い。誰もが認めるような状況になり、はっきりと確信できるまで利上げはないということを意味するからだ。労働参加率や平均時給が上昇し、弱含む各種経済指標が力強さを取り戻す、特に弱含む不動産市況もしっかりする必要がある。「忍耐強く」という文言を表面上は削除したが、イエレンFRB議長は今後も依然として忍耐強い心で金融政策の舵取りを行うということが明確となった。
これで、6月の利上げの確率はかなり下がった。指標がいまいちで利上げがあるかないか誰もがモヤモヤしている間は、サプライズの利上げはなく、また唐突な利上げによりリスク資産や新興国市場から資金が一気に引きあげられるといった事態が発生するリスクは大きく低減したといえよう。《YU》
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