関連記事
食虫植物の葉ができる仕組みが明らかに
研究チームの長谷部光泰教授、福島健児大学院生、藤田浩徳研究員、川口正代司教授(基礎生物学研究所の発表資料より)[写真拡大]
基礎生物学研究所などによる研究グループは、食虫植物サラセニアは、葉の特定の場所で細胞の分裂方向を変えるという細胞レベルの変化で、平らな葉から袋への大きな形の変化が引き起こされていることを明らかにした。
サラセニアは、小動物を「食べる」ことで他の植物が生育できない貧栄養環境でも生育できる。ダーウィンも1875年に書いた「食虫植物」という本の中でサラセニアの食虫性について言及しており、1976年には米国の研究者が、袋のような葉はハスのような盾状の葉と同じような仕組みでできるという説を提唱した。
今回の研究では、サラセニアの葉が出来る過程を走査型電子顕微鏡を用いて詳細に観察した。その結果、袋型の葉であっても、葉がつくられる一番はじめは、平らの葉と同じく平坦な形をしていることが分かった。さらに、葉の表側と裏側を特徴づける遺伝子が働く場所を調べ、平らな葉で見られるパターンに類似しており、盾状の葉で見られるパターンとは明確に異なることが分かった。
つまり、袋状の葉が盾状の葉と同じような仕組みで進化したとする従来提唱されてきた仮説は正しくない可能性が高まった。葉が作られる過程における細胞分裂の方向を調べると、平らな葉では葉の表面に対して垂直に細胞分裂が起き、葉は腕を伸ばすように広がるが、サラセニアの葉においては、先端側では平らな葉と同じように表面に対して垂直に細胞分裂が起きるが基部側では、表側の内部組織が異なる方向(葉の表面と平行)に細胞分裂を起こし、中央部分がでっぱってくることが明らかになった。
今後は、細胞レベルの詳細な研究を進めていき、作物や花卉の形を人に役立つように変えるための基盤情報を提供することにも繋がると期待されている。
なお、この内容は「Nature Communications」に掲載された。
スポンサードリンク