バイオマス発電関連株と林業ルネサンス関連株の2本立てで人気テーマの「再生可能性」に期待=浅妻昭治

2015年3月16日 11:03

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

 口癖のように「肉は腐る前が一番おいしい」と力説していたベテラン投資家がいた。いわゆる熟成肉のメカニズムの援用で、肉は適切に処理をして40日間も長期保存するとタンパク質が凝縮してうまみ成分が増すことを株式投資になぞらえたものだ。株価も、天井が近いほど値動きが大きくなって売買高も急増、リターンも大きくなることを自説としていた。

 これは、米国の投資家ジョン・テンプルトンが、投資家マインドの強弱に基づいて「強気相場は、悲観のなかで生まれ、懐疑のうちに育ち、楽観とともに成熟し、陶酔(ユーフォリオ)のなかで消えて行く」と看破したことと同じ相場観測セオリーである。あのベテラン投資家が、かつてのバブル相場の崩壊に際して、誤って「腐った肉」を口にせず無事に逃げ果たせたのかその後日談は詳らかでないが、もしそのベテランに前週末の13日に再会していたら、やはり口癖をまた吹聴するのかどうか興味津々となった。

 前週末13日の東京市場は、メジャーSQ値の算出日で一部波乱も予想されたが、前日12日の米国ニューヨーク・ダウ平均株価の259ドル高の急反発を受けて買い先行でスタートし、日経平均株価は、2000年4月以来約15年ぶりの高値をつけ、東証1部の売買代金、売買高とも昨年11月以来4カ月ぶりの高水準となった。

 それでも日経平均株価は、まだ上場来高値を2万円も下回り最高値の半値水準でしかなく、「天井近し」などと警戒警報を発したら大曲りとなり、「ご意見無用」とばかり大目玉を落とされることは間違いない。しかし、東京市場を引っ張る米国のニューヨーク・ダウ平均株価は、上場来高値圏にあり、今週17日~18日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)次第では、FRB(米連邦準備制度理事会)が、今年6月にも金利引き上げに踏み切る確度が高まる可能性があり、ドル高による企業業績直撃の警戒感も高まり、金融情勢が新たなシーンを迎えるかもしれないのである。

 にもかかわらず13日の東京市場では、「持たざるリスク」、「買わざるリスク」などと声高に言い交されるのを耳にすると、テンプルトン流の投資家マインドの分析からは、強気相場は「悲観」、「懐疑」、「楽観」、「陶酔」のどの相場ステージにいるか気に掛かったのである。

 東京市場は、それでなくても「官製相場」と言われ続けてきた。日銀の金融緩和策に加えて、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、共済年金、かんぽ生命などの「クジラ」投資家の買い支えが大きく株価水準を押し上げてきた。しかも、前週末の高値更新の一つの材料となった今週18日の春季労使交渉(春闘)の集中回答日での2年連続の賃上げは、これも「官製春闘」ともいわれている。「一強多弱」を実現した安倍政権は、春闘でも政治プレッシャーを強めており、これに株高が加わって、まさに「官製」の経済の好循環への道筋をつけつつあるようである。

 大手経済紙でも安倍内閣の政権運営は、すでに経済対策を離れて安全保障関連法案、4月の統一地方選挙に移っていると観測されており、この観測が当たっていれば、政治ステージも、「楽観」もしくは「陶酔」までレベルアップしていることになり、「官製相場」はいいとことまできている可能性も捨て切れない。

 相場テーマでも、「楽観」から「陶酔」を通り越して一回転、再度、「悲観」ステージにある銘柄群がある。再生可能エネルギー関連株だ。九州電力 <9508> が、昨年9月に固定価格での買取・接続申し込みの回答を保留したことをキッカケにメガソーラ・プロジェクトが相次いでストップ、関連各社の受注が急減して業績が悪化、株価も急落したためだ。しかし、その関連株の一角に「悲観」ステージから「懐疑」ステージに移行しそうな銘柄が出てきている。バイオマス発電関連株である。

 これは、まず新年度の固定価格制度の買取価格では、太陽光発電は3年連続の引き下げるとなるが、バイオマス発電は据え置きとなるとともに、区分も細分化され優遇策を打ち出されたことにある。また安倍政権が重要課題としている「地域再生計画」の第1弾の21計画のなかに、北海道下川町のバイマスを使った熱電併給施設の建設事業が取り上げられている。バイマス発電が、「地産地消」のエネルギー開発で、地域のエネルギー供給の効率化・自律を実現するとともに、この燃料の木質チップの供給に向け地域の林業の振興、就業人口の拡大など「林業ルネサンス」による地域起こしにつなげることが政策目的として掲げられている。

 この政策の後押しを先取り、バイマス発電所の建設計画も活発化し、燃料の木質チップの価格が上昇し資源争奪戦の様相を強めているとテレビ、新聞で再三、報道されており、燃料の安定調達に向けた林業関連株を含め、バイオマス発電関連株は、「懐疑」ステージから「楽観」ステージへシフトすることが見込まれることになる。今後の相場の本筋銘柄は、「クジラ」投資家主導の主力株となりそうだが、主力株への追随に二の足を踏む向きは、バイオマス発電関連株と林業ルネサンス株に再生可能エネルジー株だけに、文字通りに「再生可能性」を期待して資金の一部を配分することも一考余地があるはずだ。(本紙編集長・浅妻昭治)

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