【コラム 山口亮】民主党が救いようのない理由(4):政治家のキャリアパスなどを含め、政権担当政党としての総合的な仕組みが欠如しているとの認識が欠如している

2015年2月9日 11:45

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【2月8日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

■政治家になる人材をリクルートし、育てていくキャリアパスの仕組みの欠如

 日本の政治の問題点の一つは、優秀で志を持った人間が、政治家を志さないという問題について、民主党も、他の野党と同様に、なんら解決策を示していない。

 実際に、2014年12月に行われた前回の衆議院選でも、民主党は前政権政党であるにもかかわらず、過半数の候補者を擁立できないという、前代未聞の状況が起こっていた。そもそも、今の政治システムであれば、当選の見込みのない選挙に出馬しようとする人は多くないはずだが、そういったことも含めて解決策を提示するのが、政治家の本来の役割ではないか。

 そもそも政党においても、どのように議員になる人物をリクルートし、議員の政策形成やその他の実務能力を高め、より有効で質の高い政治を行うようにできるか、そういった視点からの問題意識がない時点で、欠陥があるというべきだろう。

 「公務員制度改革」をはじめとした霞が関改革が話題にならなくなったことは悲しい限りだが、自民党には、部会などを通じて、個々の議員の政策担当能力を高めていく仕組みなど、政権を担当するための制度的インフラが、少なくとも民主党(や維新の党などの他の野党)と比べれば存在していることは、現時点では否定しがたい。

■有権者にとって良い政治を行うことが、政治制度設計の最終目的

 株主と経営者の関係でもいえることだが、株価を2倍にできる経営者と、現状維持の経営しかできない平凡な経営者であれば、仮に報酬を多く払っても、株価を増やせる経営者を選ぶのが株主の利益に一致している。有権者と政治家の関係も、基本的には、プリンシパル(代理人、経営者や政治家)とエージェント(株主や有権者)の関係にある。政治家に報酬を多く払っても、それに見合う働きをしてくれれば、(個人的なねたみとかはあるかもしれないが)別に問題はないはずである。

 外資系証券会社やコンサルティング会社で、高給で働いているような、能力の高い人が、政治家という職業を目指す仕組みにしなければ、日本社会に先はない。

 今の日本社会で、冷静に考えて、ホワイトカラーで一流企業に勤めていれば、家族もいて安定的な生活ができるところ、国会議員でも目指すものならば、当選までの生活費をどのように確保すればいいかについてなどのせこい話でさえ、なんの保障はなく、はっきりしない。

 国会議員には一応の報酬があるが、ほとんどの議員にとっては、自分の給与から私設秘書を雇用する費用を支出することが一般的であり、事実上無給みたいな状況になっていることが多い。これでは、志が高くて能力が高い人でも、職業としての政治家を志すことに普通は躊躇するだろう。

■国会議員の給与は高くても良い

 以上の観点で考えると、私は、国会議員の給与は高くてもいいと思う。実際に、政治には必要なコストがかかるところ、日本には政策担当秘書の人数が少ないし、とても議員立法を霞が関の官僚に対抗して作成していく資源があるとは思えない。

 実際に、衆議院選挙が小選挙区比例代表併用制に移行した後、鳩山兄弟や麻生太郎氏のように、世襲で実家が富裕な背景を持つ人物が、能力とは関係なく、より政治的に力を持ったりしている。民主党も、選挙の時に手足となって動いてくれる労働組合への依存度が増しているように思える。そもそも仕組みの設計の時点で、90年代の「政治改革」は失敗しているのであるから、改めてどのような政治システムを構築すべきか、国民的な課題として考えるべきだ。

 もっとも、ただ国会議員の給与を増やすよりは、野党にも政策形成能力を持たせるために、一定規模の議席を持つ野党には、100人単位の政策担当スタッフを党に配置し、政策を競争させ、スタッフが選挙活動などに従事することは禁止するとか、落選した元議員も、影の内閣において政策形成を担わせ、報酬を払うようにするとか、いろいろな案は考えられる。

 この問題一つをとっても、何か意味のある案を出したとか、建設的な議員立法の案を出したとか、なんら解決策を出せないのであれば、民主党にも、まったくもって存在意義がないということだ。【了】

やまぐち・りょう/経済コラムニスト
1976年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、現在、某投資会社でファンドマネージャー兼起業家として活躍中。さくらフィナンシャルニュースのコラムニスト。年間100万円以上を書籍代に消費するほど、読書が趣味。

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