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【コラム 山口利昭】グループ間取引の公正性については役員の勉強が必要かも・・・
【2月6日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
物流サービス事業を展開するロジネットジャパンさんが、(誰かによって)監査法人に告発されたことを契機として、同監査法人からグループ間取引の適切性に疑義を呈され、第三者委員会を設置したことを公表しました。
最近は大手の監査法人さんを中心に通報窓口を設置されていますので、内部告発が監査法人さんに最初に届くケースも多いと思います。過年度開示の訂正が必要な事例について、最近は監査法人さんも躊躇なく企業側に疑義の解消を求めてこられますので、こういった事例は今後も増えるでしょうね。
企業集団の内部統制といえば、野村證券孫会社株主代表訴訟事件や福岡魚市場株主代表訴訟事件等を中心に、親会社による子会社不正の見逃し責任がイメージされることが多いようです。しかし、親会社の忠実義務の履行という面においても配慮が必要です。
グループ会社との取引、関連当事者との取引においては、親会社取締役の利益相反取引、一部の関連会社のみ優遇する取引(アームスレングス・ルール違反)、親会社の利益確保の機会を奪ってしまう子会社取引、関連当事者であることを隠匿する粉飾リスク等、いずれも親会社取締役の忠実義務違反(善管注意義務違反)に該当するおそれがあります。
子会社不正の問題ではありませんが、親会社自身に損害を発生させないように、親会社の取締役が企業集団としての内部統制を適切に構築することは、こういった親会社取締役の不適切な業務執行を排除するためにも必要です。
昨年12月24日、コンタクトレンズ大手のSEEDさんは関連当事者との不適切な取引について、外部委員会報告書を開示していますが、同委員会は、親会社取締役の法令に対する認識不足が長期にわたる不適切取引の放置につながったと結論つけています(この報告書は、親会社取締役が認識すべきグループ企業管理の法的義務についてきわめて丁寧に解説されており、とても参考になるものと思いますので、ご一読をお勧めいたします)。
こういった関連当事者取引に関するリーガルリスクというものも、ふだんあまり意識されていない役員さんも多いかもしれませんので、法的責任と直結するものである以上、研修等で勉強しておいたほうがいいかもしれませんね。
SEED社の事例は、社長さんが最初に不正の端緒に気が付き、社内調査が開始されたという珍しい事件ですが、だからこそ自浄能力が発揮されたものと思われます(社長さんが気づくまでわからなかった、という意味においては内部通報制度が機能していなかった、ともいえそうですが・・・)。【了】
山口利昭(やまぐち・としあき)/山口利昭法律事務所代表弁護士。
大阪府立三国丘高校、大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(平成2年登録 司法修習所42期)。現在、株式会社ニッセンホールディングス、大東建託株式会社の社外取締役を務める。著書に『法の世界からみた会計監査 弁護士と会計士のわかりあえないミソを考える』 (同文館出版)がある。ブログ「ビジネス法務の部屋」(http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/)より、本人の許可を経て転載。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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