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【黒澤善行の永田町ウォッチ】農協改革、与党内の議論が本格化
【2月4日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
安倍総理は、衆議院予算委員会で「消費者ニーズに対応した強い農協をつくり、農家の所得を増やしていくことが目的だ」「農業の可能性を引き出すのは、農家に一番近い地域農協が創意工夫することだ。農業者の視点に立った農業の抜本改革を断行し、農業者の所得倍増をめざしたい」と説明し、農協改革の実現への決意を示した。
政府は、農家の自立や単位農協の自由な経営を確保するため、農協改革を盛り込んだ農協法改正案を統一地方選前に閣議決定のうえ通常国会に提出する予定で、与党内で議論が進められている。検討されている農協改革は、全国約700の農協組織を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)による地域農協への監査・指導権限を法施行後3年以内に撤廃して任意団体へ転換するとともに、地域農協が「組合員に事業の利用を強制してはならない」という規制も新設するなどを柱としている。専門の農協監査士が監査を行う現行制度から、公認会計士による監査制度への変更が検討されている。また、農協の事業目的を「営利を目的としてはならない」から「農業者の所得の増大、農業者の利益増進」に変更するほか、農産物を販売する全国農業協同組合連合会や経済農業協同組合連合会などを分割や株式会社化などができる規定の新設や、農業者以外の准組合員による農協事業利用の制限することなども盛り込まれる予定だ。
こうした案に、JA全中は、農協法で定められた指導・監査権を存続させながら、「自律的な制度」に自己改革すると主張している。安倍総理は「一般論として言えば、法的な裏付けがないとできない事業を行う組織は、自立的とは言えない」と指摘したうえで、JA全中は「地域農協や農家のサポート役に徹してもらいたい」と、強制的な指導・監査の役割を転換すべきとの認識を示している。
政府は、与党との調整を2月上旬までに終えたい考えだが、与党内では「外部監査で透明性を高めるべき」といった賛成論がある一方、自民党の農林族などを中心に「JA全中から権限をなくせば農家の所得が上がるのか」「自主改革を尊重すべき」などの慎重・反対論も根強くある。また、公明党も「期限ありきではなく丁寧な議論が必要だ」「農協監査の廃止ありきではなく、実態に即した議論を」(井上幹事長)などと牽制している。安倍総理が積極的に進めようとしている戦後70年談話や、集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障法制なども含め、公明党が「安倍政権のブレーキ役」を担っている姿勢を、4月の統一地方選を前に示したいとの思惑もちらついている。
自民党と公明党は、政府案の説明や関係者ヒアリングなどを踏まえて農協改革に関する議論を本格化させているが、政府の農協改革案どおりにまとまるかは未知数で、3月下旬まで政府・与党間の綱引きなどが続くこととなりそうだ。【了】
黒澤善行(くろさわ・よしゆき)/愛知県春日井市生まれ。立命館大学政策科学部卒業、立命館大学政策科学研究科博士前期課程修了。毎日新聞社「週刊エコノミスト」記者、衆議院議員政策スタッフ、シンクタンク2005・日本(自民党系)研究員などを経て、従来の霞が関の機能を代替できる政策コンサル産業の成立を目指す株式会社政策工房の主任研究員に就任。主著に『できる総理大臣のつくり方』(春日出版、共編著)、『ニッポンの変え方おしえます―はじめての立法レッスン』(春秋社)がある。政策工房Public Policy Review(http://seisaku-koubou.blog.jp)より、著者の許可を得て転載
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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