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【黒澤善行の永田町ウォッチ】補正予算案、3日に成立へ
【2月4日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
先週1月30日、生活者支援や地方活性化などを柱とする緊急経済対策を裏付ける「補正予算案」(総額3.11兆円)について、安倍総理はじめ全閣僚出席のもと衆議院予算委員会で締めくくり質疑を行ったうえで採決を行った。補正予算案は、与党の賛成多数により可決した。その後、衆議院本会議に緊急上程され、与党や次世代の党などの賛成多数により可決、参議院へ送付された。「補正予算を組まざるを得ないこと自体、アベノミクスが機能していない証拠だ」などと批判してきた民主党や共産党などは反対した。2月2日から、参議院予算委員会で補正予算案の審議がスタートしている。
29日から始まった衆議院予算委員会の質疑では、安倍総理が「デフレを脱却して、国民生活を豊かにするには、三本の矢しかない」と、アベノミクス実現に向けた意欲を繰り返し強調した。
アベノミクス推進に伴う格差問題を対決軸として打ち出したい民主党は、「適切な分配がなければ、持続的な成長ができない」「所得格差が拡大すると経済成長が低下する。税の再分配機能を強めていくべきだ」(長妻代表代行)などと主張した。これに対し、安倍総理は「成長せずに分配だけを考えていけば、じり貧になる」「経済成長の果実を広く国民に行き渡らせる」などと反論し、格差是正に固執する民主党をけん制した。
また、民主党の「トリクルダウン(富めるものが富めば、富が滴り落ちる)的発想はやめるべきだ」(大塚・参議院議員)との指摘に、安倍総理は、家計への直接支援にも取り組む姿勢や、経済界に賃上げを働きかけていることなどを強調して「トリクルダウンを期待している政策を行っているわけではない」「全体をしっかりと底上げしていくのが私たちの政策だ」などと反論した。
昨年11月の衆議院解散により臨時国会で廃案となった労働者派遣法改正案を政府が通常国会に再提出することについて、民主党は「若者が派遣に流れ、派遣労働者が増えるだけの改悪だ」「派遣の固定化につながる」(山井・衆議院議員)などと批判した。
同法案は、派遣労働者の柔軟な働き方を認めることを目的に、企業の派遣受け入れ期間の最長3年という上限規制を撤廃(一部の専門業務を除く)する一方、派遣労働者一人ひとりの派遣期間の上限は原則3年に制限して、派遣会社に3年経過した後に派遣先での直接雇用の依頼や、新たな派遣先の提供などの雇用安定措置を義務づける内容となっている。
昨年の臨時国会で、公明党が、廃案に追い込みたい野党側の主張を取り込んで同法案の成立に道筋をつけるねらいから、派遣就業が臨時的・一時的なものとの原則を考慮するよう厚生労働大臣に求めると明記した修正案骨子を、厚生労働委員会理事会で提示した。しかし、民主党などが「法案に問題点があることを認めた」「修正するなら政府が法案を出し直すべき」などと抵抗したため、与党は、同法案の成立を断念することとなった。
このことから、自民党と公明党は、30日の与党政策責任者会議で、直接雇用を促す姿勢を示す観点から「派遣就業が臨時的・一時的なもの」であることを明記することや、非正規労働者の均等待遇のあり方を検討するための調査実施について改正案附則に盛り込むことなどの修正を施すよう、政府に求めることで合意した。ただ、民主党は「本質的な修正だとは思わない」(岡田代表)としており、引き続き廃案をめざす方針だ。
このほか、維新の党が国会議員の定数削減や公務員人件費などの削減など「身を切る改革」の実行を、安倍総理に求めた。安倍総理は、国会議員の定数削減を含む衆議院選挙制度改革について、町村衆議院議長の下に設置されている第三者機関「衆院選挙制度に関する調査会」で取りまとめられる予定の答申を「自民党総裁として賛成する」と表明した。そして、「各党、各会派が(第三者機関に)任せた以上、出てきた案に賛成することが大切だ」「他党もそういう方向を示してもらいたい」と同調を呼び掛けた。
3日に安倍総理はじめ全閣僚出席のもと質疑を行ったうえで採決することで、与野党は合意している。同日中に参院本会議へ緊急上程し可決・成立する予定だ。衆議院の質疑時間をめぐって与野党が協議した際、与党が提示した2日程度を野党が受け入れる代わりに、補正予算成立後には集中審議を実施することとなった。
補正予算が3日に成立する見通しが立ったことから、与野党は、4日と5日に安倍総理出席のもと経済政策や外交問題をテーマに衆参両院の予算委員会で集中審議を開催することで合意した。6日には、参議院決算委員会が開催される。民主党など野党側は、アベノミクスの弊害や問題点のほか、戦後70年談話と安倍総理の歴史認識、イスラム教スンニ派過激組織「ISIL」による日本人殺害事件での政府対応などについて追及するようだ。【了】
黒澤善行(くろさわ・よしゆき)/愛知県春日井市生まれ。立命館大学政策科学部卒業、立命館大学政策科学研究科博士前期課程修了。毎日新聞社「週刊エコノミスト」記者、衆議院議員政策スタッフ、シンクタンク2005・日本(自民党系)研究員などを経て、従来の霞が関の機能を代替できる政策コンサル産業の成立を目指す株式会社政策工房の主任研究員に就任。主著に『できる総理大臣のつくり方』(春日出版、共編著)、『ニッポンの変え方おしえます―はじめての立法レッスン』(春秋社)がある。政策工房Public Policy Review(http://seisaku-koubou.blog.jp)より、著者の許可を得て転載
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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