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【黒澤善行の永田町ウォッチ】補正予算案の国会審議がスタート
【2月1日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
通常国会が召集により、第三次安倍内閣発足後として初めての国会論戦がスタートした。新内閣発足後は所信表明演説を行うのが恒例だが、国会日程が窮屈なものになっていることから、与党の提案により、安倍総理の演説は、来年度予算案の国会提出後に行う施政方針演説に一本化することとなった。予算の年度内成立をめざす政府・与党は、まず補正予算の成立に全力を挙げ、その後、来年度予算案を2月12日に国会へ提出して、同日中に安倍総理による施政方針演説など政府4演説を行う方針を固めている。
政府は、26日、生活者支援や地方活性化などを柱とする「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」を裏付ける補正予算案(総額3.11兆円)を国会に提出し、麻生財務大臣が補正予算案に関する財政演説を衆参両院の本会議で行った。
麻生財務大臣は、補正予算案について「地域の実情に配慮しつつ消費を喚起すること、仕事づくりなど地方が直面する構造的な課題への実効ある取り組みを通じて地方の活性化を促すこと、災害復旧等の緊急に対応を要することや復興を加速化することに重点を置いた」「経済の脆弱な部分に的を絞り、スピード感を持って対応することで経済の好循環を確かなものとするとともに、その成果を地方に広く早く行き渡らせることをめざしている」と説明した。そのうえで、「長引くデフレ不況からの脱却を確かなものとし、経済の好循環を拡大していくためには、本補正予算の一刻も早い成立が必要」と予算成立への協力を呼びかけた。
27日の衆議院本会議と28日の参議院本会議で行われた財政演説に対する各党代表質問で、野党は、「行きすぎた円安や実質賃金の減少など、国民生活を苦しめている」(民主党の前原議員)と、アベノミクス批判を展開して政策転換を迫った。消費税率10%への引き上げの1年半延期はアベノミクスの失敗が原因だとも指摘した。こうした批判に対し、安倍総理は「消費税率8%への引き上げにより、個人消費などに弱さが見られたことから延期を判断した」と説明したうえで、有効求人倍率や賃上げ率が高水準にある点などを示して「好循環が着実に生まれ始めている」と反論した。そして、「社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たし、国の信認を確保するため、10%への引き上げは景気判断条項を付すことなく確実に実施する。そうした経済状況をつくり出す決意で、三本の矢の政策をさらに前へ進めていく」決意を述べた。
また、新規国債発行をせずに政策経費(国・地方)をどれだけ賄えているかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度までに黒字化させる財政健全化目標の達成が困難になっていることについて、安倍総理は「歳出全般にわたり聖域なく徹底的に見直す」と強調した。麻生財務大臣も「2016年度予算の概算要求基準に間に合うよう、夏までのできるだけ早い時期に策定したい」と述べた。
このほか、野党側からは、補正予算案に盛り込まれている地方自治体向け交付金などはバラマキ施策だとの批判や、国会議員の定数削減や公務員人件費などの削減など「身を切る改革」の実行を求める意見も出された。さらに、日本人殺害脅迫事件への対応と中東情勢などについても安倍総理らを問い質した。
28日、衆議院予算委員会で補正予算案の趣旨説明が行われた。与党は、2日間の質疑を経て30日の衆議院本会議で可決、参議院送付をめざしている。参議院予算委員会での審議を経て、2月3日にも参院本会議で可決・成立させるシナリオを描いている。
一方、野党側は、統一地方選をみすえ、徹底審議を求めていく構えだ。27日に開催された野党9会派の国対委員長らによる会談で、「巨大与党にしっかりした審議を求めるには野党の協力が欠かせない」として、徹底審議に向けて野党間の連携を深める考えで一致した。また、来年度予算案の審議も十分な審議時間の確保を要求し、成立を急ぐ政府・与党を牽制していく考えだ。
補正予算案の審議日程をめぐっては、27日の衆議院予算委員会理事懇談会で、今週中にも衆議院を通過させたい自民党が委員会質疑を2日間程度とすることを主張したのに対し、民主党は5日間の開催を要求した。民主党は、「緊急性がなく、2014年度に前倒しすることで15年度の見かけ上のプライマリーバランスを確保しようという思惑も透けてみえる」(細野政調会長)と、補正予算案に反対する方針だ。維新の党も来年度予算案を提出する2月12日まで国会日程に空白をつくるのは望ましくないとして、民主党に同調した。
28日の理事懇談会で再協議した結果、29日と30日に安倍総理はじめ全閣僚出席のもと質疑を行い、30日に委員会採決することで合意に至った。30日、衆議院本会議に緊急上程され、同日中に衆議院通過・参議院送付となる見通しだ。【了】
黒澤善行(くろさわ・よしゆき)/愛知県春日井市生まれ。立命館大学政策科学部卒業、立命館大学政策科学研究科博士前期課程修了。毎日新聞社「週刊エコノミスト」記者、衆議院議員政策スタッフ、シンクタンク2005・日本(自民党系)研究員などを経て、従来の霞が関の機能を代替できる政策コンサル産業の成立を目指す株式会社政策工房の主任研究員に就任。主著に『できる総理大臣のつくり方』(春日出版、共編著)、『ニッポンの変え方おしえます―はじめての立法レッスン』(春秋社)がある。政策工房Public Policy Review(http://seisaku-koubou.blog.jp)より、著者の許可を得て転載
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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